おんな城主直虎 最終回(第50話)のあらすじとネタバレ「石を継ぐ者」

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二人とも、なぜ子どもになっているのだ?直虎はいぶかり、己の身を見て驚いた。子どもに、とわに戻っていたのだ。行きますぞ、と鶴丸が言った。

「行く? どこへじゃ?」

「見たいと言うておったではないか。この先のことが」

亀之丞が笑って応えた。

「…この先を、見られるのか?」

と言い、はっとして、嫌じゃ! と、とわは叫んだ。

「われにはまだ、やらねばならぬことがある!」

大事ない、と、笑顔のままで亀之丞が言った。

「おとわが俺の志を継いでくれたように、次は誰かがおとわの志を継いでくれる」

そのとき、おーい、と声がし、男の子が現れた。

「おい! 行くんなら、俺も連れていってくれ」

それが、子どもに戻った龍雲丸であることが、とわにはすぐに分かった。でも、なぜここに…?

「では皆様、参りますぞ」

鶴丸が言った。この3人と、一緒に行ける。不意に大きな喜びが押し寄せ、とわは思いきり声を張った。

「いざ!」
 

8月28日──。
井伊谷には、抜けるように青く、どこまでも高い空が広がっていた。

両の道端は、手を合わせ、涙を浮かべる百姓たちで埋め尽くされた。もの言わぬ直虎を収めた白いひつぎが、長い長い列の間をゆっくりと運ばれていった。

同じ頃、ある海岸に船の残骸と、赤い飾りのついた水筒が打ち上げられていた。

乱戦が2ヶ月に及んだ10月。
北条方が、ようやく和睦に応じる姿勢を見せた。

徳川側の条件は、旧武田領のうち甲斐と信濃を占領し、上野一国を北条領とすることである。この交渉にあたり、使者として家康が選んだのが、22歳、まだ小姓姿の万千代であった。

「そなたにできるか」
「できます。潰れた家の前髪だからこそできる和睦をご覧に入れまする」

万千代は、直之、六左衛門らと手分けして甲斐・信濃をくまなく回り、徳川へ臣従すると誓う国衆たちの起請文を集め歩いた。そして交渉の場に、それらを積み上げた。北条方は、徳川の条件をのむしかなかった。

直虎の死がもたらした衝撃と悲しみから立ち直った万千代は、井伊の魂を受け継ぐ者として、大任を見事に果たしたのである。

三河・遠江・駿河・甲斐・信濃の5か国を領有することになった徳川家は、天下に堂々と物申せる大大名の座へと、一気に駆け上がった。

この功によって万千代は、4万石に加増されるとともに、家康に願い出、ようやく元服を許された。

「今日これよりは、『直政』と名乗るがよい」
「直、政…」
「井伊の者の通字である直、そして小野の通字である政を取り、そなたの名とせよ」

のちの徳川四天王の一人が、誕生した瞬間であった。
 

直虎が願った戦のない世は、これより30数年後、家康によって実現する。そして井伊家は260年にわたって、江戸幕府の屋台骨をがっしりと支えることになる。わずか10人しか選ばれなかった大老のうち、実に半分の5人を、井伊家が輩出するのである。

おなごにこそあれ、井伊直虎。勇猛な男名をまとい、乱世の荒波に身を投じたこの女性は、疑いようもなく、日の本の平和を築いた、重要な礎石の一枚なのだった。

──完

 

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