4月23日放送の大河ドラマ おんな城主 直虎
第16話「綿毛の案」の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第16話「綿毛の案」あらすじ
直虎(柴咲コウ)は瀬戸村を訪れ、方久(ムロツヨシ)がそれを出迎えた。
方久「よく無事でお戻りに」
直虎「銭の力は借りられなかったが、なんとか戻ってこられたぞ」
方久は少しも悪びれることなく、大きく頷いた。
方久「方久は信じておりました。直虎様ならきっと、銭の力など借りずとも己の才覚で戻っていらっしゃると」
直之「よく言うのぅ」
そんな方久は、いい話を用意していると言うと、従者を呼び寄せた。
三方の上に、雲のようなふわふわしたものが乗っている。
直虎「なんじゃ、これは」
方久「木綿にございます」
直虎にとっては初めて聞く名前だ。
方久「麻より柔らこうござるな」
中野直之(矢本悠馬)は、自分が来ている麻の着物となで比べている。
方久「木綿は丈夫で柔らかく、冬場の暖かさにも優れております。いずれ麻に取って代わることは間違いなし。飛ぶように売れるようになりましょう。そこで、どん!」
方久は綿の実を取り出した。
方久「もととなるこの綿の実を井伊で作ってはいかがかと」
直虎は心底感心した。
直虎「方久…そなたはまことに素晴らしいの」
方久「もったいなきお言葉!」
そう言うと、方久は平伏した。
直虎「なんという銭の犬じゃ!」
方久「うーカンカン! カーン!」
盛り上がる2人を横目に、直之はやや引いている。
方久「さっそく甚兵衛に育てさせましょう!」
甚兵衛「試すっくらいならできましょうが…」
甚兵衛は小さな綿の種を見ながら、困惑した様子で言った。
直虎「なんじゃ、申してみよ」
甚兵衛「売るほど育てるにやあー、人が足らんかと。先に下されました3年荒野のお話、耕した土地が己のもんとなり、しかも3年間お年貢はなしっちゅう、大層ありがたきものではごぜえますが、わしらも思うようにはなかなか取り組めんので…」
人手が足りないというのは盲点だった。
直虎たちは仕切り直して考えることにした。
直虎「人ばかりは、増やせと言ってすぐ増やせるものでもないしのぅ」
直之「戦では、足りぬ場合は借りてまいりますが」
直虎「借りる?人をか?」
直之「ええ。他家に頼んだり」
直虎「え!では借りてくればよいのか?」
直之「あくまで戦の場合の話にござって、平時に百姓を借りるなどという珍妙な話は聞いたことがございませぬぞ」
直虎はやってみないと分からないと言い、がぜんやる気になっている。
六左衛門(田中美央)のもとに、直虎と直之がやってきた。
直之「殿が、鈴木の家に足りぬ百姓を借りると言い出されたのでござる」
鈴木や菅沼、近藤は浜名湖周辺を領有する領主で、今川家から目付を言いつかっているが、もともとは井伊家の被官だった。
直虎「鈴木の家は直親殿の母上の生家であるし、鈴木殿の妻は奥山の出。井伊とは親戚じゃし、一つ助けていただけぬかと思うてな」
六左衛門「はぁ」
直虎の突拍子もない発想には慣れている六左衛門は、大して驚くこともなかった。
直虎「ということでな、明日発つぞ、六左」
六左衛門「え?それがしが行くのでございますか?」
直虎「鈴木の家といちばん近しいのはそなたではないか。善は急げじゃ!」
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翌日、直虎と六左衛門は鈴木重時の元を訪れた。
重時「お知らせくだされば、こちらより出向きますものを」
直虎「こちらからの頼み事、自ら来るのが筋というもの」
鈴木は戸惑っている。
直虎「実は、百姓を少しばかり借り受けたいのじゃ」
重時「どこかで戦でも?」
直虎「いや、さようなことではなくての。土地を耕す百姓が足らぬゆえ、少しばかり融通していただけぬかというご相談じゃ」
戦支度ではないと、六左衛門も重ねて言い添えた。
しかし重時は、難しい顔をしている。
直虎「借りた者たちは、決してむげには扱わぬ。百姓が耕した土地はそのままその百姓のものとするし、実りが出て3年は年貢も取らぬ。土地持ちでない百姓にとってはよい話と思うが」
直虎はかなりの好条件を並べたが、重時は丁重に断った。
重時「合力したいのはやまやまでござるが、当方も人手が足りておりませぬので」
直虎「そこをなんとかお願いできぬか」
重時「申し訳ございませぬ。まこと百姓を貸せるようなゆとりはないのでございます。何とぞご容赦くださいませ」
せめて夕餉(ゆうげ)を供したいと言うと、直虎は快諾した。
直虎は料理を食べながら、ふと漏らした。
直虎「まことなのかのぅ?」
六左衛門「何がにございますか」
直虎「人がおらぬというのは。屋敷の中にも、それなりに人はおるように見えるがのう。但馬の手前もあるし、井伊には合力したくないのかもしれぬの」
六左衛門「あの…但馬様からお願いしていただくという手はございませぬか?」
六左衛門がおそるおそる進言した。
すると、たちまち直虎の顔が曇った。
直虎「あやつの手は借りたくない」
この手の交渉は、政次(高橋一生)が得意であることは分かっている。
だからこそなおさら、政次の手を借りることは、直虎には受け入れがたいことなのだ。
直虎「言うたところで手など貸してもくれぬわ。井伊はこれから但馬抜きでやっていくのじゃ!」
直虎の剣幕に恐れをなし、六左衛門は慌てて料理に手を付けた。
直虎「まぁ、目付は3人おる。別の考えの者もおろう」
六左衛門「え!他家にもお願いに上がるのでございますか?」
直虎「当たり前じゃ!空手で帰るわけにはいかぬであろう」
そのころ、政次はしの(貫地谷しほり)の元を訪れていた。
政次「かような一筆を頂いたにもかかわらず、実はこのたびは…」
しの「そなたの不手際のせいで、これからの井伊はおの女子のやりたい放題ということですね」
政次「今は、待つときかと。あの脇の甘い女子のこと、必ずぼろを出します」
しの「その脇の甘い女子にしてやられたのであろう!?そなたも今川も!」
たしかに、寿桂尼(浅丘ルリ子)としては、百姓たちの嘆願書などはねつけることもできたはずだ。
百姓たちにあれほどの信頼を得た女城主がいかに井伊を治めるか、見てみたくなったのかもしれない。
政次「仰せのとおりにございますが、あまりあちこちに噛みつかれますと、頼りを失いまするぞ」
政次がくぎを刺した。
しのは悔しそうに唇をかんだ。
虎松の生母であっても、直虎の器には遠く及ばない。
しのは、そう理解せざるを得なかった。
政次が屋敷に戻ると、声を掛ける者がいた。
そこにいたのは、新野の屋敷にいるはずのなつと亥之助だ。
なつ「お留守の間に勝手なことをし、申し訳ございませぬ。亥之助を父親の育った家でと思い、新野のお屋敷を下がらせていただきました」
政次は驚き、珍しくまごついた。
なつ「邪魔との仰せであれば、出ていきますが…」
政次「邪魔などではないが、ここに戻ると風当たりもきつかろう」
やじろべえのようにゆらゆらと、井伊家中の橋渡しをする、それが己の役目、先々代の殿・直盛(杉本哲太)から与えられた使命だと、なつは理解している。
政次「これよりはさらにきつくなるかもしれぬ」
しの「では、お役目も励みがいがあるというものでございますね」
にっこりと笑うと、しのは一礼して退室した。
井伊のために覚悟を決めた姿は清々しいものだ。
「似ておらぬ姉妹じゃの」
政次は1人で呟いていた。
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政次は蜂前神社の禰宜(ダンカン)を訪ねた。
禰宜「方久殿の策で、井伊で綿を作ろうとしておるようです」
政次「昨今、流行り始めている木綿という布を作るためのあれか」
禰宜「策はよいが、いかんせん人がおらぬと村の者は嘆いておりましたな」
政次「それで、人でも借りに行ったということか」
そう言うと、政次は不敵な笑みを浮かべた。
「貸してくれるかもしれぬと考えるのが、あの女子の怖いところだ」
ある日、直虎のもとに方久からの書状が届いた。
瀬戸村に植えた綿の種の様子を見に来てほしいのだという。
翌日、瀬戸村を訪れた直虎は驚いた。
甚兵衛「世話はしておるんですが、まったく芽が出んのです」
土に合わないのではないか、と他の百姓が言った。
直虎「他の村にも頼んで回る。他の村なら根付くかもしれぬゆえの!」
直之「まことに回られるので?」
直之はうんざりしたような表情で言った。
直虎「よその村では余っておる人手があるかもしれぬ。それも頼んで回りたいし、一度に片付くかもしれぬではないか!」
無駄に旺盛な意欲と楽観思考はどこから湧いて出てくるのか…
直之はそんなことを思いながらため息をついた。
直虎と直之は井伊谷中の村を駆け回ったが、余った人手は見つからなかった。
少し休憩しようと場所を探していると、水の音が聞こえてきた。
直虎「そなたは休んでおれ」
そういうと、直虎は水を探して歩き出した。
水場を見つけ出すと、そこにふんどし一丁で水浴びをしている男がいた。
男は直虎に気付くと、着物を羽織り、直虎をじろじろと見ている。
水を汲みたい旨を伝えると、その男は突然、着物の前をはだけた。
直虎「何をやっておるのじゃ」
眉をひそめただけで動じる様子はない。
男の話を聞くと、旅の者だという。
直虎「どこかに百姓が余っておる村はなかったか?人手が欲しゅうて探しておるのじゃ」
男「人など買やぁいいじゃねぇですか」
直虎「か、買うことなどできるのか?人を!?」
男「たまに売っておったりしますよ」
よいことを聞いた!
直虎は男に礼を言うと、急いで駆けていった。
直之に声をかけると、再び瀬戸村に向かって走り出した。
百姓「直虎様!ほれ!見てやってくりょお!」
畑に近付いてみると、一面に小さな芽が顔を出していた。
暖かくなって、ようやく綿の芽が出てきたのだ。
直虎たちが駆けずり回っている話を聞いた方久も百姓たちも、がぜんやる気がみなぎっている。
夜になり方久の屋敷に場所を移すと、直虎は人を買う相談を持ちかけた。
方久「人の売り買いが出やすいのは戦場でしてな」
仲介を介すると、足下を見られて、1人につき2貫もとるのだという。
どこかで戦の噂はないかと直之に尋ねると、
「なりませぬ!」
と、戦場に向かうことを頑なに拒絶した。
そのとき、方久が何かを思い出したように言った。
方久「では、私の茶屋へ行ってみますか」
方久の茶屋には、商人、職人、武者、旅の者、僧侶、さまざまな者が入れ代わり立ち代わり訪れていた。
美濃で戦が近々起きるのではないかと噂話をしている武者がいた。
直虎は、その武者の話を聞こうと近付いた。
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すると、「噂を流されてはいかがか」
という声が聞こえた。
見やると、なぜか小野政次がそこに立っている。
方久「あの、噂を流すとは?」
政次「目付のお三方が人を貸してくれぬのは、領主にとってうまみがないからだ。だが、この話は百姓にとっては大きなうまみがある。かようによい話はそうそうない」
政次は、直虎の背中をちらっを見ると、
「では」
と言って去っていった。
嘘や噂をわざと流して、敵を欺いたり罠にかけたりする兵法がある、という話をすると、方久は驚いた様子で感心している。
直虎は、政次の知恵など借りたくないと消極的だ。
そのとき、直之はくるりと方久の方を向くと、大声で叫んだ。
直之「知っておるか!井伊ではただで土地をもらえるらしいぞ!」
驚く方久に、お前も芝居をしろと仕草で伝える。
方久「へ!? まことにございますか?」
芝居を続けるにつれ、店中の視線が集まってくる。
直虎は胸の内で葛藤していたが、振り切るように声を出した。
直虎「その瀬戸村とやらへの道はいかになっておる!」
直之「この街道を抜け、山を1つ越えたところでござる」
方久「皆々様、今日はお代は頂きませぬ!その代わり、このことを行く先々で話の種になさってくださるとこれ幸いにございます」
3人は茶屋の外に目を向けた。
多くの人が道を行き交っている。
街道を練り歩きながら、3人は日が暮れるまで猿芝居を続けた。
夕刻になって、3人はようやく館まで帰り着いた。
その直後、直虎はめまいと同時に意識を失い、その場に倒れてしまった。
すぐに、医術の心得がある昊天(小松和重)が呼ばれた。
直之「大事はござらぬか!? なんのご病気じゃ」
昊天「あれは…寝ておるだけです」
呆れ果てたように言った。
翌朝、直虎はすっきりと目を覚ました。
たけ(梅沢昌代)がバタバタとやってきた。
庭先に大勢の人が集まっているというのだ。
六左衛門「噂を聞きつけ、井伊にやって来てくれた者たちです。やりましたな!」
昨日の今日で成果が現れるとは…直之も嬉しそうにやって来た。
その場は2人にまかせ、直虎は龍潭寺の井戸に向かった。
すると、そこに南渓がほろ酔い機嫌でやって来た。
南渓「人も来たというし、大手柄ではないか」
直虎「呼び込んだのは、政次です」
ぶっきらぼうに答えた。
直虎「政次の策は、労少なくして実を結んだ。それは見事なものでした。とてもかないませぬ…」
南渓「足りぬ知恵なら、借りてくればどうじゃ?」
南渓は事もなげに言った。
直虎「え?」
南渓「政次に借りることにしてはどうじゃろ?」
直虎「さようなことをすれば、いつ足をすくわれるか」
南渓「それこそが、領主たる者の腕の見せ所というかの」
直虎は自信なさそうな顔をしたが、それを察した南渓は軽やかな笑顔になった。
南渓「まぁ、急ぐことはない。ゆっくり考えればよい。それはそれとして、そろそろ寺も殿のお役に立ちたいと思うておっての」
虎松の手習いを始めたいと言った。
虎松はもう5歳。直親が手習いを始めたのも同じ頃だ。
直虎「ぜひもなし。よろしゅうお頼み申します」
その夜、直虎は六左衛門の報告を受けていた。
甚兵衛らが百姓たちの面倒を見てくれているという。
六左衛門「これからは人が入るということ、但馬殿にお伝えしてよろしいでしょうか」
直虎「…好きにせよ」
話を通しておくというのが筋というものであろう。
六左衛門は、その足で小野の屋敷を訪ねたが、政次が駿府へ発った直後だった。
政次が駿府の今川館の控えの間で待機しているところに、菅沼忠久が声をかけてきた。
政次「これは菅沼殿。太守様のご機嫌はいかがにございましたか」
忠久は周りを見回すと、声を潜めて言った。
忠久「大方様が倒れられたそうで…内密にされておるようです。一命は取り留められたとのことですが、どうなりますやら」
寿桂尼は70を越えている。いつこの世を去ってもおかしくはない。
それが井伊にどう影響していくのか…政次でさえ、その先を読むことは難しかった。
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