3月26日放送の大河ドラマ おんな城主 直虎
第12話「おんな城主 直虎」の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第12話「おんな城主 直虎」あらすじ
12月のある日、直親(三浦春馬)は家臣団を従えて、井伊谷を出立した。
次郎(柴咲コウ)は直親たちを見送りはせず、井戸端で黙々と水垢離(みずごり)を行なっていた。
次郎「ご初代様。どうかご加護を直親に。
井伊に、どうかご加護を」
真冬の冷たい水を何度も頭からかぶった。
全身の感覚が消えていくのがわかった。
井伊谷にしては珍しく雪の混じった寒い日だった。
そのとき、布を差し出す人影が見えた。
直親の幻影だと気付き、次郎はその場で崩れ落ちた。
直親の一行は、掛川城の近くで待ち伏せしていた今川の手の者たちに囲まれていた。
あっという間に、雪が血で染まった。
まさに父・直満(宇梶剛士)の死の再現であった。
直満より厳しいと言えるのかもしれない。
申し開きの機会も、切腹による死も許されず、問答無用に斬殺されたのだ。
子の直満、孫の直盛(杉本哲太)、娘の佐名(花總まり)、そして孫の直親を失った直平(前田吟)は、悲しみに暮れていた。
直平「これでは、なぶり殺しではないか!」
次郎は朦朧としていた状態から目を覚ました。
井戸端で気を失い、三日三晩生死の境をさまよっていたのだと聞かされた。
自分が水垢離をやっていたことをようやく思い出した。
そのとき、昊天(小松和重)の声が聞こえた。
昊天「殿のお帰りじゃ!」
次郎は布団から這い出し、ふらふらと歩いた。
境内には孫一郎(平山祐介)や藤七郎(芹澤興人)たちが目を閉じ、横になっていた。
そこには直親の姿もあった。
次郎「亀…直親…?」
黒く乾いた血がこびりつき、顔は蝋のように白くなっている。
次郎は思わず手を伸ばした。
すると、その手はぱしりと払われた。
しの「触るでない。私の夫じゃ」
しの(貫地谷しほり)が目を真っ赤に充血させて立っている。
しの「そなたが殺したようなものではないか。
何もかも、そなたのせいではないか!
ようのこのこと面をさらしておれるの!」
なつ(山口紗弥加)「次郎様、姉は悲しみのあまり
正気をなくしております。
どうかお許しを…」
次郎「しの様のおっしゃるとおりじゃ」
次郎は背を向けると、そのまま退室した。
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その後、何日もの間、次郎は何をどう過ごしていたのか思い出せなかった。
不意に読経の声が聞こえてきた。
直親たちの葬儀が行われているのだろうか。
私も経をあげなければ。
そう思っても体が動かない。
おとわ、あの経を聞かせてくれぬか。
直親の声が聞こえた。
次郎はその場で経に唱和しようとした。
しかし、喉が詰まり、一言も発することができなかった。
松平家との結託を疑った今川氏真(尾上松也)の追及は、すさまじいものだった。
まだ2歳の直親の子・虎松を殺せと命じてきたのである。
左馬助「それがしが駿府へ参ります」
新野左馬助(苅谷俊介)が言い出した。
左馬助は、次郎の母方の伯父で、今川から遣わされている目付だ。
左馬助は切腹覚悟で氏真と対面し、虎松の助命を許された。
ただし条件がある。
直平が戦に出ることだという。
次郎「おおじじ様は70を越えているではございませぬか!何ゆえにそんな…」
直由「井伊にはもう、戦の采配ができる男は、われら以外におらぬのです」
次郎「お三方がいなくなったら、井伊はどうなるのでございますか?」
直由「われらは必ず戻ってくる。仮にそのもしもが起こったとしても、それはもはや天命じゃ」
直平は、達観したように微笑んでいる。
次郎には、その笑みが不吉に思えた。
その年、今川家に反旗を翻した国衆を攻めるために、井伊家にも出陣要請があった。
出陣した直平は、陣中で不審な死を遂げた。
毒殺とも囁かれたが真相はわからなかった。
その1年後、左馬助と直由(筧利夫)は、別の戦であっけなく討ち死にした。
平安の昔から500余年にわたって続いた井伊家は、断絶の崖っぷちに追い詰められていた。
永禄8(1565)年の春。
直親殺害を今川とともに企んだのではないかと噂になっていた男が帰ってきた。
駿府に行ったきり戻っていなかった政次(高橋一生)だ。
当主不在の井伊家で、政次は祐椿尼(財前直見)と対面した。
政次は、新しい3人の目付と引き合わせると、とんでもないことを口にした。
政次「太守様のご意向により、それがしを虎松様の後見としていただきます」
祐椿尼「お待ちなさい!
いくら太守様でも井伊の家督に口を挟むことはできぬはずです!」
政次「家督は虎松様。
それがしは、ただの後見にて。
これはお下知にございます」
祐椿尼は、南渓(小林薫)を頼るべく龍潭寺へ向かった。
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次郎「生きておったのか、政次」
政次「ああ」
政次「直親の内通ゆえに、今川に捕らえられてな。井伊にはもう政を任せられる者もおらぬようになってしまったと、戻されたというわけだ」
昔の政次とは違っていた。
冷たく底光りするような目をしていた。
皆死んでしまったのに、政次だけが助かってここにいる。
幼なじみが今川に寝返ったことを、このとき次郎は直感した。
次郎「裏切るつもりで裏切ったのか、
それとも、裏切らざるをえなかったのか!」
政次「恨むなら、直親を恨め」
そう言うと、政次は冷笑した。
政次「ヘタを打ったのはあいつだ。
何度も同じことを繰り返し、井伊は終わるべくして終わったのだ」
言いたいことを言うと、政次は去っていった。
直親を恨めじゃと…?
次郎は怒りが噴き出した。
傑山(市原隼人)の槍を持ち出し、次郎は政次を追った。
そこに南渓がふらりと現れた。
南渓「鶴を狩りにでも行くか?」
怒りと悲しみが次郎の中で渦巻いた。
槍を地面に突き立てると、次郎は大声で叫んだ。
次郎「われのせいで直親は死んだ!
藤七郎も孫一郎も、おおじじ様も、左馬助伯父上も中野殿も!われは災厄をもたらすだけじゃ!」
南渓「己を責めたところで、死んだ者は帰らぬ」
南渓は次郎に近付くと、槍を引き抜いて言った。
南渓「じゃが、死んだ者を己の中で生かすことはできる。
例えば、偲ぶことで。
例えば、習うことで。
ときには、習わぬことで。
…他にはないかの?」
直親を生かすことなどできない。
できることがあるとしたら…
次郎は頭を巡らせ、南渓を見つめた。
「亀にこの身を捧げる。
…われは、亀の魂を宿し、亀となって生きていく」
南渓「それがお主の答えなのじゃな」
次郎はうなずき、唇を噛んだ。
涙が溢れ、頬を伝って落ちた。
井伊の居館に南渓の声が響いた。
南渓「井伊は今まさに存亡の危機を迎えておる」
聞いているのは、政次と、今川からの3人の目付の近藤康用、鈴木重時、菅沼忠久、奥山家を継いだ六左衛門、中野家の継嗣・直之だ。
南渓「次に家督を継ぐ虎松は、まだあまりに幼い。
墨染めの身でまことに僭越ながら、井伊の末席に連なる者として、虎松の後見となる者を推挙したい」
誰が指名されるのか、誰も聞かされていない。
全員が耳を立てた。
南渓がひときわ大きく声を張った。
「その者の名は、井伊直虎と申す」
なおとら?
聞いたことのない名に、一同が顔を見合わせる。
そのとき、襖ががらりと開いた。
その姿に、誰もが息を呑んだ。
そこに立っているのは、華やかな衣装に身を包んだ次郎だった。
「われが、井伊直虎である」
強く見つめている政次を見返し、言った。
「これより井伊は、われが治めるところとなる」
とわでも次郎法師でもない。
井伊直虎がこの世に誕生した瞬間であった。