妙案
すぐに北条戦に向けての軍議が開かれた。
「さて、北条軍は今、甲斐を攻めておる。一方で、信濃にも兵を進めつつある。まず、どことどう戦うか」
昌幸が信幸、矢沢頼綱、内記、昌相たちの考えを求め、激しい戦闘をも辞さない意見も出た。
すると、信繁が自分に妙案があると言う。北条が甲斐に兵糧や武具を運ぶ荷駄は、上野から碓氷峠を越えて必ず小諸を通る。小諸さえ押さえてしまえば、甲斐に侵攻した北条勢は補給路を断たれて孤立する。
「さすれば、われらは、無駄に味方の命を損なわず、戦に勝てまする」
見事な策だと信幸が感嘆した。信繁に精気が戻ったことを心から喜んでいた。
信繁の策案による真田の活躍が転機となり、徳川勢は息を吹き返し、形勢を逆転された北条勢は戦略の練り直しを迫られた。
昌幸たちは、真田屋敷に凱旋した。
「北条に泡を食わせ、徳川に恩を売ってやった」
徳川と北条は、当分攻防を繰り返すはずだ。
「その間にわしらは力を付けるのだ」
昌幸は次にどんな行動に打って出るか、信幸、信繁ともに目を輝かせている。
そこに、内記が急を知らせる書状を手にして飛び込んできた。昌幸が受け取り、素早く書面に目を走らせて愕然とした。
「……信じられん。徳川と北条が手を結んだ」
氏政が持ちかけた和睦の話に、家康はまるで渡りに船とばかりに応じた。実は、家康には戦が長引いては困る事情があった。
徳川は甲斐に押し寄せた北条勢を押し返したとはいえ、小田原を本拠とする北条の大軍を倒したわけではない。頼みとしていた織田方は、羽柴秀吉と柴田勝家の対立という内紛の火種が熱くなり、徳川に援軍を出せる状態ではなくなっていた。
和睦により、甲斐・信濃は徳川に、上野は北条に、それぞれ分け合うことが決まった。そこには真田の領地が含まれていた。
(続き:第10話)
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