大河ドラマ 真田丸 第12話『人質』あらすじとネタバレ

直江兼続の一手

2、3か月が過ぎ、上田城の昌幸に、直江兼続から書状が届いた。「沼田城を上杉に返してほしい」と記されている。さかのぼれば、上杉が支配していた城だが、今は真田と北条が取り合っている。上杉に返すのなら、人質を出してまで支援を求めた意味がない。

兼続の真意を計りかね、昌幸が思案した。
「源次郎を人質に出したかいがあったぞ。これは、あいつの仕事だ」

もしや兼続はまたも無理難題を吹っかけて、真田の本心を探ろうとしているのではないか。昌幸から解決を頼まれた信繁は、この疑問を直接、景勝にぶつけてみた。すると驚いたことに、他国との談判はすべて兼続に任せていて、景勝は今度のことを何も知らなかった。
「兼続に掛け合ってやってもよいぞ」
景勝は、気さくに請け合った。

上杉景勝の素顔

何日かして、信繁と三十郎は、漁民の治兵衛と又吉が春日山城に来て、3か月前に景勝が吟味すると約束した一件で、早く裁いてほしいと取り次ぎの小姓に訴えているのを目撃した。だが、何も進捗しないまま、漁民たちは追い返されてしまった。

そのすぐあとに、景勝と兼続が来た。景勝は訴えの解決を先送りにしていることが心苦しいのか、事情の説明を兼続に任せて離れていく。

兼続が、ため息とともに景勝を目で指した。
「困っている者を見ると、まず先に力になると約束されてしまう」
気持ちに嘘はないが、できない約束を重ねることになる。領民のもめごとはあとを絶たず、一つの争いを丸く収めれば、次から次へと際限なく裁かなければならなくなる。戦で疲弊した今の上杉に、それだけの余裕はない。

景勝が戻ってきて、ぽつりと漏らした。
「今のわしには、話を聞いてやることしかできぬ。……これが本当のわしじゃ」
景勝は人としての素顔をさらし、期待を裏切ったのではないかと信繁を見つめた。
「正直、きのうまで、私は御屋形様を尊敬しておりました。今は、それ以上に、慕わしく存じます」
信繁は偽らざる気持ちを述べ、はたと気付いた。
「ひょっとして、例の沼田城の一件も」
案の定、景勝から兼続へのとりなしはなされていなかった。しかも、昌幸に沼田城を引き渡す意志がないと知ると、兼続は態度を硬化させた。
「上杉は、真田とは手を結ばぬ」

領民を思う

信繁と景勝は、春日山城の望楼に登って直江津の港を遠望した。越後は謙信が存命中に、直江津、柏崎、寺泊などの港を繁栄させ、国が大きくなった。今は船の数も少ないが、景勝には、いずれにぎやかな港を復活させたいという思いがある。

この日は好天で、景勝、信繁、三十郎は、陽気に誘われて海へと向かった。馬を進めていくと、争いになっている北浜と南浜に近い神社で漁民たちが騒いでいる。信繁と三十郎は神社のほうに行き、景勝は笠と頭巾で身分を隠してあとに続いた。
信繁が何事かと聞くと、漁民が答えた。
「鉄火起請が始まるんでさ」

境内に入ると、治兵衛と又吉がいた。火の上で真っ赤に熱せられた鉄の棒の前で儀式を仕切っているのは、斉木という名の奉行だという。
「北浜の治兵衛が途中で落としたら、あの浅瀬は南浜のもの。南浜の又吉が落としたら、あの浅瀬は北浜のもの」
治兵衛が先だが、真っ赤な鉄棒を握る勇気が出ずに青ざめている。そこに、信繁が進み出た。
「お奉行は、これでまことに正しい裁きになるとお思いですか」
「もちろんじゃ。神の御心を承るにはこれが一番」
信繁は鉄火起請などやめたほうがいいと考え、斉木は古来のしきたりなのでやるべきだと考え、2人の言い分はまるで違う。そこで信繁は、どちらが正しいか、神の判断を仰ぐことにした。
「鉄火起請、私たちもやりましょう」
三十郎は万事心得ていて、支度を整えた。信繁は自信満々で、赤い鉄の棒の前で精神を集中している。斉木は動揺し、鉄火起請で決める必要はないと前言を撤回して漁民を混乱させた。
「もうよい。すべては、わしがいけないのだ。もっとお前たちの暮らしを思いやるべきであった」
景勝が笠と頭巾を取り、不意に現れた国主に漁民たちが驚いて土下座した。

漁民たちは毎年、アサリの収穫量の多い浅瀬が南北どちらの浜に属するかで対立してきたという。そこで信繁が、南浜と北浜が1日交替で漁をするという案を出したが、潮のいい日・悪い日があって不公平になると却下された。そのやり取りから、景勝が思いついた。
「潮の変わり目で分ければよい。満月が来るたびに、浅瀬の漁を替わるのだ」
治兵衛と又吉ともに得心がいき、景勝の裁きにより一件落着となった。

城への帰路、景勝は信繁の策士ぶりをおもしろがりながら、大事なことも教わったと言う。民の暮らしを守ることが、強い国を作ることになると。
「お主のような子が欲しかった」
景勝の言葉に、信繁の胸が熱くなった。

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