11月12日放送の大河ドラマ「おんな城主 直虎」
第45話「魔王のいけにえ」の詳細なあらすじです。
前回(第44話)はこちら。
おんな城主 直虎 第44話のあらすじ「井伊谷のばら」
ネタバレ注意!
おんな城主直虎 第45話「魔王のいけにえ」あらすじ
田中城攻めの陣中で起きた、家康殺害未遂事件の処罰は、苛烈を極めた。近藤武助は市中引き回しのうえ、八つ裂き。一族もことごとく死罪とされた。
これで幕引きかと思われたが、それは徳川家を襲う最大の悲劇の幕開けにすぎなかった。
天正7(1579)年4月。
家康の側室が男子を産み、長丸と名付けられた。のちの二代将軍・秀忠だが、この世の誰一人、今はそれを知る由もない。
「和子様がお生まれになったと、岡崎へ使いせよ」
康政に命じられ、万千代は信康のもとへ向かった。
歓喜に沸いていた浜松城とは正反対に、知らせを受けた岡崎城には冷気と緊張が広がった。
信康「母上…おかしな顔をなさっておいでですよ」
瀬名「そなたこそ、おかしなことを。そなたに弟、徳川としてこれほどめでたいことはございますまい」
家康の正室・瀬名は微笑していた。が、強い怒りを押し殺しているのは明らかだった。
浜松に戻り、万千代は問われるまま、岡崎で見聞きしたことを告げた。家康は嘆息を漏らして呟いた。
家康「弟が生まれただけなのじゃがのぅ」
康政「岡崎は今立場が弱うございますゆえ。弟君が生まれたというだけでも不安を覚えるのかもしれませぬな」
難しい顔で言う康政に、家康も眉を寄せて返した。
家康「何か岡崎が喜ぶことを考えたほうがよいかもしれぬの。…織田にも顔が立つであろう」
直虎のもとに瀬名からの文が届いた。差出人の名を見た南渓は、顔をほころばせている。
直虎「信康様の側室を探しておられるそうで、井伊谷によいおなごはおらぬかと。年の頃のよい後家、もしくは男の生まれやすい家のおなごでと」
南渓「…信康様のご嫡男が欲しいということかの」
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織田家から嫁いだ正室・徳姫には2人の娘がいたが、信康の跡継ぎとなる男はいない。一方、家康に男児・長丸が生まれたことは直虎も伝え聞いていた。それで瀬名は焦り始めたのだろうか。嫡男に恵まれない我が子・信康が、徳川家の世継ぎの座を長丸に奪われるのではないかと…。
お家騒動のにおいがした。君子危うきに近寄らず──。瀬名には申し訳なかったが、直虎は側室探しには関わりを持たないことにした。
7月になり、家康は思い切った策を評定にかけた。
「信康様は浜松城に、殿が岡崎城に入られるのですか」
驚きを浮かべる酒井忠次に、家康は泰然と返した。
家康「岡崎にはずいぶんと入っておらぬし、どうであろう」
忠次「しかし、殿が本城を開けるといいますのは…」
家康「信康は織田の娘婿。浜松を任せるとなれば、織田の覚えもよかろうと思うがな」
ああまで織田に気を遣わねばならないのか。末席に控える万千代は、半ばあきれて家康を見ていた。
「ちょうど安土城が出来上がったところ。お祝いに上がるとともに、その旨を織田様にお伝えするがよい」
選りすぐった駿馬を祝いの品とし、忠次は安土城へ向かった。すべてが丸く収まるはずだった。ところが忠次は、信じられない話を持ち帰ってくるのである。
「それで、信康様が武田と通じておると認めたと。信康様を斬るなどと請け負うてきたと申すのですか!」
浜松城の広間に、大久保忠世の怒声がとどろいた。うなだれていた忠次も、顔を上げて叫び返した。
「ああ言わねば、徳川ごと反旗を翻したと言われんばかりじゃった!」
──安土城の豪華絢爛な一室で、上機嫌で馬の礼を述べる信長に、忠次は平伏し、礼を尽くして応じた。
忠次「めっそうもないことにございます。今日の徳川があるは上様のおかげと、わが主人からにございます」
信長「なのに、何ゆえ徳川殿は余を欺こうとするかのぅ」
その刹那、襖が閉じられた。同席する明智光秀が、一通の書状を忠次の眼前に突き出して言った。
光秀「徳姫様より書状が届いた」
そこには十二箇条に及ぶ、信康の悪行愚行がずらりと書き連ねられていた。
「信康殿は徳姫様に断りもなく側室を置き、ないがしろにしておられる。これはまことか」
返す間もなく、内通は? と信長が畳み掛けた。
信長「書状によると、信康殿は武田と通じておるとのことなのじゃが、これはまことか」
忠次「いや、まさかさようなことは…」
信長「岡崎は先だっても内通者を出したばかり。そのうえ、浜松に男子が生まれた。立場を危うく思うた岡崎が謀反を考えるのは、ない話ではなかろうと思うが。もしや浜松の指図で、岡崎に内通をさせておるのか?」
忠次「め、めっそうもないことでございます! 浜松は織田に忠誠を誓うておりまする!」
信長「では、これは岡崎が、信康が勝手にやっておることと。そう考えてよいのじゃな?」
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──静まり返った広間に、康政の声が響いた。
「まず調べましょう。織田に申し開きをするにも、向こうの挙げた話がまこと根も葉もない嘘であるかどうか。それを調べねば、無実であると出られませぬ」
康政は岡崎に急いだ。調べが進むほど、今回の件が、織田の言いがかりであることが明白になった。瀬名は信康の側室に、2人の女を立てていた。武田の元家臣の娘ではあったが、両家とも今は徳川に下り、忠実な家来となっていた。徳姫に、実家に何かを讒言した様子はない。
織田が信康に、家康と同じ
康政「私見ではございますが、それがこたびの言いがかりのきっかけになったのではと…」
康政はそう言うと、報告を締めくくった。
忠勝「取り込めぬなら、いっそということか」
信長への怒りと呪詛を吐き散らすような声で、本多忠勝が言った。
信康にふさわしい側室が見つかったという文が瀬名から届き、直虎はほっと胸をなで下ろした。前の文を無視したことが、ずっと引っ掛かっていた。直接会って祝いを述べようと、直虎は岡崎へ出向いた。
再会に喜びの声を上げる瀬名の顔は明るかった。
「15年ぶり、いや、もっとにございましょうか」
瀬名は浮き立つような声で、今日からこちらへ家康が移り、信康が浜松の城に入ることを話した。
瀬名「信康が生まれて以来、岡崎は不安になっておったのです。そこを、信康に本城をお任せしようと殿が言うてくださり」
直虎「信康様は、やはりまごう方なきお跡継ぎであると、内外に示すということか。…よかったのぅ」
瀬名は笑顔で、はい、とうなずいた。そのとき廊下で、乱れた足音と、切迫した声がした。
「榊原殿、何をなされます! 殿、これは!?」
瀬名と顔を見合わせ、直虎は廊下に出た。数人の男に捕らえられた信康の姿があった。浜松城で見たことのある男が、落ち着いた声で告げた。
「武田と内通したるかどにて、信康様を大浜城へ幽閉のうえ、死罪とすることとなった」
ふらりと前に出る瀬名を、直虎は声もなく見ていた。
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