11月19日放送の大河ドラマ「おんな城主 直虎」
第46話「悪女について」の詳細なあらすじです。
前回(第45話)はこちら。
おんな城主 直虎 第45話のあらすじ「魔王のいけにえ」
ネタバレ注意!
おんな城主直虎 第46話「悪女について」あらすじ
万千代と万福は、大浜城を訪れていた。
「信康様を堀江城へお移しする」
「し、しかし、こちらに入ったばかりで…」
慌てふためく見張りの兵に、さっと家康の書状を見せ、強い口調で万千代は言った。
「殿からのお指図にござる」
いずれ死罪とするなら監禁場所を移す必要はない。移送した先の堀江城で、万千代は信康に、これが家康の命による時稼ぎであることを明かした。
「お気付きかと存じますが、あなた様のお首を望んだは織田。殿は従ったふりをし、一方であなた様の助命をかなえるべく北条との密約を進めております」
北条は武田と同盟しているが、両家は今や手切れ寸前となっていた。その北条が徳川と結ぶとなれば、武田にとっては大きな痛手となる。
「それを手土産に、助命を願い出るお考えです」
その後も家康は、信康を二俣城に移し、さらに時を稼いだ。織田の苛立ちが頂点に達しようとした頃、事件は起こった。瀬名が岡崎城から姿を消したのである。
武田との内通を示す、勝頼の花押が入った書状が文箱から見つかった。急報が届けられた浜松城の広間で、合議中だった家臣たちがささやき交わした。
「武田と通じておったのは、お方様ということか」
「お方様のお首を差し出せば、信康様は助かる…ということになりますかな」
「これほどの証があるなら」
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お待ちくだされ、と、万千代は末席から声を放った。
「まこと通じられていたのならば、わざわざかような者を残し去ることなどございますまい!」
同意を示すかと思った家康が、ご苦労であった、と使いの者に言い、忠勝に向かって大声で命じた。
「瀬名に追っ手を放て。武田に通じる道、信康のおる二俣城に至る道、街道に兵を差し向けよ。捕らえ次第、首をはねるがよい!」
その姿は井伊谷にあった。旅装に包まれた身は細く、生きた者ではないほど儚げに見えた。その佇まいが、赤い唇の間から出る言葉が嘘であることを告げていた。
瀬名「信康の顔を見に行くのです。許されることになったので、出迎えて驚かせてやろうと思うて。ついでに、と、こちらに立ち寄り…」
立ち去ろうとする瀬名の腕を、直虎は強く掴んだ。
直虎「そなたの首をもって、事を収めようと考えておるのか。武田と内通しておったのは息子ではなく己であると、そんなところか。瀬名!」
直後、目の前で刀の切っ先が瞬いた。ハッと見ると、従者とおぼしい男が、後ろ手に瀬名をかばって立っていた。駆け出そうとした瀬名が、すぐに足を止めた。その眼前にも刃があったのだ。
「…お話がございます」
息を荒くさせて立っているのは、万千代だった。
龍潭寺の庫裏で、直虎たちは万千代の話を聞いた。家康は、瀬名が母親の生地を訪れることを見越して、万千代たちにあとを追わせたのだった。
万千代「殿も成り行き上、止めるわけにはいかず、今お二人には追っ手がかかっております。そこで…」
直虎「しばらくの間、井伊にてかくまえということか」
万千代「殿からのお願いにございます」
万千代と交わした視線を、直虎は瀬名に向けた。
直虎「井伊は逃げる隠れるには慣れております。ほとぼりが冷めるまでご案じなく」
従者「ようございましたな、お方様」
従者が笑みをこぼす。表情を変えずに瀬名が言った。
瀬名「殿の策は実るのですか?」
皆、黙り込んだ。必ず実る策など、どこにもない。
瀬名「ならば…やはり私が通じたとしたほうが、信康を間違いなく救い出せるのではないですか?」
そのとおりだった。気を取り直し、直虎は言った。
直虎「あのとき、今川館に閉じ込められた折も、すんでのところで徳川殿の策は実ったではないか。ここはひとつ、徳川殿の運の強さを信じてみぬか?」
瀬名「…ええ、私はあのとき、あそこで死んでおってもおかしくはなかった。ゆえにこそ、その生命は、殿と殿の愛する息子のためにこそ使いたいのです」
瀬名の目は死んでいた。止めることは、もはや誰にもできない。直虎はたまらず、大声で叫んでいた。
「死んでいく奴は皆、さようなことを言う! そりゃあそうじゃ、そちらは死ねば終わりじゃからな!」
何を言っても無駄だ。分かっていながら続けた。
「残される者のことを考えたことはあるか。助けられなんだ者の無念を、考えたことがあるか!」
瀬名が微笑した。
その目から、すっと涙が流れた。
「おいとまいたします。あね様」
透き通るような顔にかける言葉は、もうなかった。
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家康は悲しみと怒りを必死でこらえ、信長は冷たく笑っていた。丸桶を前に押しやり、家康は言った。
「わが妻、瀬名の首にてございます」
信長がわずかに眉を上げた。武田と通じたのは妻であり、息子は何も知らなかった。何とぞお許し願いたい。瀬名の思いを刻み込むように言い、家康は続けた。
「われらはこたび、北条と手を結びましてございます。武田を亡きものにしたあとも、徳川は織田と変わらずよい関わりを続けていけることを願うております」
敵に回ることも辞さず。その意思を両の目に込めた。
信長が、声を立てて笑った。
「そこまで言うなら、徳川殿の好きになさるがよい。その代わり、余も好きにするがな」
凍りつく家康をその場に残し、信長は歩み去った。
9月15日。父・家康の命により、徳川信康、自刃。
21歳という若さであった。
別れ際、押しつけるように瀬名から渡された紅入れを、直虎は万千代の前に置いた。
直虎「よろしきときに、殿にお渡し願えればと思うて」
万千代「…とても、お渡しできるようなご様子では」
無言の時が続いた。浜松城の座敷を、冷気を含んだ秋風が吹き抜けた。呟くように直虎は言った。
直虎「そなたの父上を救えなんだとき、私にできたことは、父上の変わり身となって生きることじゃった」
万千代は、ぼんやりと紅入れを見ている。
直虎「生き残った者にできるのは、その志を宿すことだけじゃ。信康様は、どのような志を持っておられた?」
万千代「…いつも、己の立場より、お家の行く末を考えるようなお方で。…殿も、いつもは1人で打たれる碁も、信康様とだけは対局なさり」
直虎「ならば、そなたが信康様の変わり身となればよいではないか」
そう言われて万千代は、自分が2歳違いの信康に、兄のような感情を抱いていたことに気付いた。
「ではの」
直虎は腰を上げた。座敷をまた、風が吹き抜けていった。
ぽつねんと座り、家康は1人で碁を打っていた。背後から近付き、万千代はザッと碁盤を払った。
「ご無礼を。お考えが進んでおらぬよう思われたので。…もう一度やりましょう。私がお相手します」
家康が怒気を浮かべて立ち上がり、飛び散った碁石を拾っては万千代に投げつけ始めた。
「お、お前は、何様のつもりじゃ!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにさせ、家康は繰り返した。碁石を浴びながら、万千代は瀬名の紅入れを碁盤の端に置いた。
「お方様が見ておられます」
石つぶてが止まった。主の顔を見、万千代は言った。
「考えましょう。この先の、徳川のために」
立ち尽くしていた家康が、碁盤の前に腰を下ろした。お方様と信康様と、俺の気持ちが入った。居ずまいを正して座り直し、万千代は家康の言葉を待った。
[次回] 第47話「決戦は高天神」あらすじとネタバレ [no_toc]
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