おんな城主直虎 第44話のあらすじとネタバレ!「井伊谷のばら」

[3/3ページ]

わが身への沙汰が、万千代はまだ信じられずにいた。一石は、大人の男一人が一年に食う米だ。つまり俺は、一万の民を有する領主と同じ身上になったのだ…!

だからといって領主になれたわけではない。元服がかなえば、むろん井伊家の当主になれる。だが…。

「となれば、若、おとわ様に家督を譲ると言っていただかなくてはならぬのでは?」

直虎の顔が浮かび、万千代は地団駄を踏んだ。
「ここであの意地悪ババアに手綱を握られるとは…。井伊万千代、一生の不覚!」

そこに当の直虎から文が届き、万千代は肝をつぶした。祐椿尼が病床にあることを伝えるものだった。

直虎と万千代は、龍潭寺の井戸端で手を合わせた。二人の話は全く、悲しいほど噛み合わなかった。

皆でうまく取り仕切っている井伊谷に、要らぬ波風を立ててほしくないと願う直虎と、いずれは父祖伝来の地を取り戻したいと心中深くで切望している万千代とでは、それも仕方のないことだった。

直虎「さような考えなら、家督は決して譲らぬぞ」
万千代「望むところです。ならば力ずくで引きはがすまで」
直虎「…できるものならやってみるがよい」

最後は喧嘩別れ同然となった。顔を合わせて、かえって溝が深まったのを二人とも感じただけだった。
 

秋のある日、祐椿尼は静かに旅立った。
幸せとはいえぬ人生を娘に送らせてしまった、と涙ぐむ母に語ったみずからの言葉を、直虎はその後、何度も思い出した。

「もし私に兄や弟がいて、どこぞの殿方に嫁ぎ、館の奥で過ごしておったならば、百姓たちはただ米を運んでくる者と思うておったでしょう。ならず者たちは世を乱す悪党。商人は銭ばかり追い求める卑しき者。乗っ取りをたくらむ家老は敵。そこにそれぞれの人生や思いがあるなどとは思いを馳せることすらせず…」

出会い、別れてきた人たちの顔が浮かんでは消えた。

「私は幸せにございますよ、母上。この人生をお与えくださり、かたじけのう存じます」

祐椿尼が息を引き取った直後、一斉にばらが咲いた。名の長春は、四季を通じて花がある意味だという。

母上、あなたそのものではありませんか。淡い紅色の花に向かって、直虎は静かに手を合わせた。
 

[次回] 第45話「魔王のいけにえ」あらすじとネタバレは近日更新

 

あわせて読みたい

ノベライズ版

小和田哲男(時代考証)

 

サウンド・トラック

コメント

タイトルとURLをコピーしました