10月8日放送の大河ドラマ「おんな城主 直虎」
第40話「天正の草履番」の詳細なあらすじです。
前回(第39話)はこちら。
おんな城主 直虎 第39話のあらすじ「虎松の野望」
ネタバレ注意!
おんな城主直虎 第40話「天正の草履番」あらすじ
松下虎松(菅田将暉)が井伊万千代となり徳川家に仕える。
その知らせは松下・井伊の両家にも伝わり、両家に大きな衝撃を与えた。
松下家当主・源太郎(古舘寛治)は跡取りを失ったショックで寝込んでしまった。
直虎(柴咲コウ)は、どなり込んできたしの(貫地谷しほり)に詫び、請われるまま虎松宛てに文を書いた。さらには近藤康用(橋本じゅん)のもとへ申し開きに出向くなど、奔走を余儀なくされた。
その頃万千代は、浜松城で草履番の仕事に専念していた。
城に出入りする徳川家家臣全員の名札を用意し、脱がれた草履に名札を付け、いかに仕事の効率を高められるかと工夫に余念がなかった。
松下の家にいたときは武道をみっちり鍛錬したものだが、それと同じくらい、何かを考え策を巡らせるのは好きだった。自分の力で一刻も早くここから抜け出してやる、という意地のようなものが、今の万千代をなんとか支えてもいた。
常慶(和田正人)が万千代のもとに、井伊や松下からの手紙の束を届けに現れたことがあったが、封を開いてもいない。
松下姓でなら今すぐ小姓になれる。そうしろ。
そんなことが書き連ねてあるのは、読まずとも分かっていたからだ。
最も多忙なのは、皆が下城する夕刻だった。誰もが我先に草履を求め、手間取ると怒声が飛び交った。
「厄介なのは、出すときにすぐに探せぬことよの」
並べて置いておけば混乱せずに済む。万千代は、棚を設けることを思いついた。
虎松、と呼ぶ太い声がしたのは、作った棚に草履を収めているときだった。
常慶様だな。
そう思って振り向くと、そこには最も見たくない人物の姿もあった。
「少し話がある」と言う直虎に、万千代は背中を向けて言った。
万千代「お役目の最中にございますので」
直虎「ではそのままでよい。そなたは井伊の亡きお方たちのためと思うて、こたびのような仕儀を考えたのであろう。じゃが生き残っておる者たちにとって、そなたのやっておることは、ありがたいとは言い難い」
奥山たちは松下に顔向けできぬ。近藤殿も憤激している。直虎の言葉は続いたが、万千代はそれを無視した。
そして、目の前に立った直虎に向かって言った。
万千代「そなたはもう当主でもなんでもない、ただの百姓ではないか。何ゆえ俺が説教されねばならんのだ!」
そなた、か…。
直虎は、万千代の目を見て言った。
直虎「当主とはなんじゃ? 己以外の誰も望んでもおらぬ、生きておる者を困らせ、悲しませるだけの行いをする者のことを、当節では当主と呼ぶのか」
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怒りをぶつけるように、万千代は言い放った。
「では、何ゆえあの日、降りられたのじゃ!」
隠れ里をともに守ろうと言っておきながら、なぜ当主の座を投げ出したのだ!
直虎が口を開きかけたとき、横合いから鋭い声が飛んだ。
「騒がしい、何をしておる! 常慶、この者は?」
常慶「井伊の先代、直虎様にございます」
重臣らしい男の横には、恰幅のよい男が立っていた。常慶と万千代、万福が急いで平伏する。
男が家康(阿部サダヲ)だと察した直虎は、3人に続いて平伏した。
家康「井伊殿。しばし、
返答を待たずに、家康は続けた。
家康「せっかく来られたのじゃ。ぜひ、話がしてみたい」
広い座敷で向かい合うと、家康が切り出した。
家康「今日は井伊のご家名のことでおいでになったのか」
井伊の生き残りとしては、やりにくいことこの上ない。松下にも近藤に対しても顔向けができない。直虎は、はっきりと言い切った。
直虎「加えて、潰れておる家の者であるからこそ、話が通ることが多くございますゆえ」
潰れているからこそ、私が何を言い出そうと、お家のためではなく、民や、井伊谷という土地にとってよいことだと信じてもらえるのだ、と直虎は続けた。
家康「…松下のみならず、井伊の者すら、万千代の、ある意味わしがやったことを喜んではおらぬと」
直虎「恐れながら、迷惑千万にござります」
苦笑する家康に、直虎は最も知りたいことを聞いた。
直虎「そもそも何ゆえ、あの子の言葉をお聞き入れくださったのですか。徳川のお家にとり、井伊の家名回復になんの利があるものか、私には測りかねます」
すると、家康は即座に3つの理由を挙げた。
直親のときも、井伊谷に攻め入ったときも、井伊を助けたかった。が、助けうるだけの力がなかった。その悔いから解き放たれたかったというのが一つ。
二つ目は、瀬名(菜々緒)の望みを聞き入れてやりたかった。
そして三つ目は──。
「万千代が、武将として大きく育つと思うたからじゃ」
育つ?
問い直す直虎に、家康はゆっくりと答えた。
「松下の跡取りとすれば、皆の目は温かい。じゃが井伊の遺児となれば、さまざまなことを言われることと思う。今川の国衆の子、銭で潰れた家の子、あるのは家格だけ。…なれど、あの子は、叩かれれば叩かれるほど奮い立つような気がしての。違うか?」
直虎「…いえ、仰せのとおりにございます」
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家康「この先、万千代が手柄を立てれば、わしはそれなりの処遇をするつもりでおる。…それが今後の徳川の生き残りを分けることにもなるとも思う」
徳川の所帯も大きくなった、と家康は続けた。
家中には今川の者、武田から来た者もいる。三河者でなくとも、実力次第で出世が望める。そういう家風にならねば、謀反が相次ぐことは目に見えている。
家康「万千代は、その先駆けとなる力を秘めておるような気がするのじゃ」
直虎「ずいぶんと高く買うてくださり、恐縮にござります」
家康「わしは信玄公のように戦に長けておるわけでもなく、信長公のように天賦の才があるわけでもない。その分、人は宝じゃ。大事にせねば」
しみじみとした言葉に、直虎は強い共感を覚えた。
直虎「その昔、井伊にはまこと人がおりませんで…、人がおらねば何もできぬのだと、痛感いたしました」
家康と語り合ううちに直虎は、非凡なる凡という言葉を思い出した。凡なることを着実に成し得ていくお方は、やはり非凡だ。虎松のあとあとの使い道も考えておられる。主として仕えがいのあるお方となろう──。
松下家の問題は、意外な形で決着することになった。
虎松の説得が不首尾に終わったことを知らせに行った直虎を痛烈に罵倒するしのに、病床に身を起こした源太郎が、こう言ったのである。
源太郎「わしがもう構わぬと言うたら、それでよいか?」
しの「な、何をおっしゃっておいでです。かような勝手、殿が引くいわれは毛頭ございませぬ!」
そなた、井伊家の再興が嬉しくないわけではあるまい。源太郎は優しく笑って言い、こう付け加えた。
源太郎「そなたは虎松の母じゃし、たとえかりそめでもわしは父じゃった。ならば最後まで親らしくあらぬか?あやつの思うように送り出してやらぬか?」
しのが、わっと泣き出した。
その隣で、直虎は深く頭を垂れた。
すぐにも松下の養子を探さねばならない。だが、虎松と亥之助が井伊と小野を名乗り、ともに歩いて行くことを思うと、源太郎には申し訳ないけれど、直虎は、新たな希望の灯を得た気もするのだった。
その万千代と万福は、ひと月以上を費やし、究極ともいえる草履番の技を完成させていた。
家臣全員の名と顔を覚えておき、玄関に誰かが近付いてくると、その足元に向け、草履を正確に滑らせるのだ。
「はい、お次。金田様、木原様、多門様~」
万千代が言えば、万福が復唱しながら草履を渡す。
受け取った万千代は、廊下に素早く草履を投げる。
と、シュタッと乾いた音を立てて滑った草履が、各自の足の手前でピタリと止まる。
締めに、万千代が叫ぶ。
「お勤めご苦労様にございました!」
その様子を見ていた家康は、笑って側近に言った。
家康「あれはもう、日の本一ではないかの」
小姓への道が開けたかと思われた。
しかし万千代たちは、新たな条件を突きつけられてしまうのだった。
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