政次のために、今何をしたらいいのか──。
答えを探すように、直虎は井戸端で座禅を組んだ。
一晩中考えたが、答えは出なかった。
そこに、南渓がやって来た。
南渓「…次郎。今日、政次が磔にされるらしい」
直虎の方がビクッと震えた。
南渓「われらは引導を渡しにいくが…行くか?」
無言のまま、微動だにしない。
南渓「…ならば、せめてここで経でも読んでやってくれ」
そう言うと、南渓は去って行った。
「…あいつは怒っておろうな」
支度を終えて政次が座していると、牢の扉が開いた。
「出られよ」
おとわとの日々が脳裏を巡った。
死出の旅へ旅立つ道すがら、直虎と過ごした日々に心を遊ばせる。
今思えば、碁盤を挟んで共に策を練り、心の中を語り合った日々が、一番幸せだったのかもしれない。
もうじき、陽の光の下で打てるようになるの
そんな幸せな空想を終えると、政次はしっかりと目を見開いた。もう迷いも後悔もない。
直虎は井戸端で一心に経を唱えていた。
ふいに、ザッと強い風が吹いた。
橘の葉が揺れ、ぽつりと雨滴が落ちてきた瞬間、直虎の繰っていた数珠が切れた。
予感がした。
政次は、もう生きてはいないと。
大河ドラマのノベライズ版はこちら。
サウンド・トラック
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」 音楽虎の巻 ニィトラ
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菅野よう子 Sony Music Labels Inc. 2017-04-05
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