6月11日放送の大河ドラマ おんな城主 直虎
第23話「盗賊は二度仏を盗む」の詳細なあらすじです。
前回(第22話)はこちら。
おんな城主 直虎 第22話のあらすじ「虎と龍」
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第23話「盗賊は二度仏を盗む」あらすじ
宴の翌朝、直虎(柴咲コウ)はひどい二日酔いになっていた。
吐き気と頭痛がひどかったが、それ以上に、記憶が飛んでいることが恐ろしかった。
六左衛門(田中美央)は、困惑した様子で昨晩のことを直虎に話し始めた。
直虎「…家来とはなんの話じゃ」
六左衛門「昨夜、頭に、家来になれとしつこく迫っておられたではないですか」
直虎「…ほかに、何かおかしなことを言わなんだか?」
六左衛門「何ゆえか存じませぬが、どこかに隠し子はおらぬかと執拗に聞いておられました」
それを聞いた直虎は、顔面蒼白になっていた。
ある日、小野政次(高橋一生)が近藤康用(橋本じゅん)と共に居館にやって来た。
近藤の菩提寺からご本尊が持ち出されてしまったのだという。
近藤「つきましては、こちらで山仕事をしておる者たちをあらためとうござる」
直虎「彼の者たちが盗んだとでも申されるのか」
近藤「噂では、井伊様はあのときの賊を処罰もせず、事もあろうに、手なずけ囲うておられると。ならば、ありえる話ではございませぬか」
直虎「もうあの者たちは以前のような盗みはせぬ!」
近藤が前のめりになる。
近藤「では、やはりあの者たちを囲うておられたと」
直虎は口ごもってしまう。
近藤「われらは木を盗まれ、本尊まで盗まれたのでございます! これ以上、当家をむげになさるおつもりなら、こちらにも考えがございまするぞ!」
本尊については言いがかりだが、龍雲丸(柳楽優弥)たちを放っておいたのは井伊の手落ちなのは間違いない。
政次「近藤殿の訴えは理が通っておりまする。その者たちを引き渡すということでよろしゅうございますか?」
追い詰められた直虎は答えた。
「…引き渡そう。連れていかれるがよい」
政次と近藤が退席するのを見送ると、直虎は急いで直之(矢本悠馬)に命じた。
直虎「川べりを行き、先回りせよ。急げ! 頭たちを逃がせ!」
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しばらくして、直之が明るい顔をして戻ってきた。
直之「さすがは盗賊上がり。異変を察し、一足先に逃げたようにございます」
直虎は、安堵と同時にかすかな寂しさを感じていた。
南渓和尚(小林薫)がとある提案を直虎に持ってきた。
近藤の菩提寺に、本尊の代わりになるものを寄進したらどうか、ということだ。
直虎「何ゆえ、寄進などせねばならぬのですか」
南渓「あの者たちがご本尊を盗んだのであろう?」
直虎「盗んでおりませぬ!」
南渓「近藤側の咎人でもあった者を勝手に裁いたわけじゃし、ご本尊を贈り、そのあたりうやむやにの。…頭を下げるのも当主の役目じゃぞ」
直虎にしてみれば、不本意だ。
南渓に連れられて、しぶしぶ寺に向かった。
事前に知らせてあった様子で、近藤も同席していた。
近藤「ご本尊がたやすく取り替えが利くなどとは思うていただきとうはござりませぬがな」
南渓「それはもう、承知いたしております。ちなみに、こちらのご本尊はどなたが」
寺の和尚「康久仏師作のお釈迦様にてございまする」
南渓「僧らは、さぞ心を痛めておりましょうな」
近藤「あの賊めらをさっさとご処罰いただければ、かようなことにもなりませんなんだものを」
近藤が皮肉を込めて言った。
直虎はくやしさをこらえて声を発した。
直虎「われが至らぬばかりに、騒動を引き起こした。まことにすまなかった」
直虎はそう言うと、深々と頭を下げた。
近藤「お顔をお上げくださいませ。それがしは、お分かりいただければそれで」
南渓が何かを思いついたように和尚を見た。
南渓「そうじゃ、ご本尊が祭られておったところを拝見したい。大きさを測っておきたいのじゃ」
和尚に先導されて、直虎たちは本堂に向かった。
厨子の扉を開くと、消えたはずの本尊が鎮座しているではないか。
南渓「はて、本尊はおらぬようになられたのでは?」
和尚「いや、その。お、おかしゅうございますな」
近藤「こ、これは本尊ではない。別のものを置かせたのであろう。そう言うておられたではないか!」
和尚は慌てて調子を合わせる。
和尚「あっ、今朝! 代わりのご本尊をお納めしてございまする」
直虎にも、この一件の背景が見え始めていた。
南渓は、仏像の背に彫られた康久仏師の銘を皆に見えるように持ち上げた。
南渓「ご本尊様が己で戻ってこられたのでございますな。思うに、これは仏の御心ではござりませぬか。わしは戻ってきたのであるから、もう、ここらで納めよと。すべてお見通しだぞと」
寺からの帰り道に、南渓は思いもよらぬ話を始めた。
昨日の夜に、突然龍雲丸が南渓のもとに忍んで来たのだという。
そして、今日の一連のご本尊の策を考えたのも龍雲丸だというのだ。
本尊は動かすのも畏れ多いはず。実際には盗まれていないのなら、本堂にそのまま鎮座しているはずだ。
しかし、南渓が寺を訪れるとなれば、さすがにどこかへ隠すだろう。
そう考えた龍雲丸は、本尊が移動される様子をこっそり見張っていた。
そして、和尚が直虎たちと話をしている間に、隠していた本尊を盗み出し、元通り厨子に戻したのだ。
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直虎「…盗人にしか考えつかぬ話ですな」
南渓「これで、近藤もおとなしくしておるであろう」
直虎「しかし、もう井伊には戻ってはこぬでしょうね…」
そう言った直後、直虎は仰天することになる。
目の前に当の龍雲丸が現れたのだ。
南渓「頭。殿がの、お主らは井伊に戻ってくるのかと聞いておるのじゃが」
龍雲丸「でなきゃ、こんな七面倒くせえことしませんでしょう。戻らねば銭も受け取れませぬし」
直虎は嬉しくてにやけ顔がおさまらない。
龍雲丸「それに、俺らはやってないと言ってくれたそうじゃねえですか。じゃあ、やってないって見せつけてやんねぇと。尼小僧様が嘘ついたことになっちまいまさぁ」
直虎は思いもよらず涙がこぼれた。
龍雲丸「なにも、泣くほどのことじゃねえでしょうが」
直虎「…すまぬ。嬉しゅうての」
男たちは井伊の山に戻ってきた。
とはいえ、春になれば木の切り出しの仕事は終わる。
別の仕事はないものかと直虎は考えていた。
そこへ直之がやって来た。
直之「井伊であの者たちを召し抱えるというお話は」
直虎「そなた、あの者らに怒っておったではないか」
直之「付き合うてみれば気のよい輩ですし、腕も立てば技もある。それがしは、あの者たちを井伊を守る家来衆にいたしとうございまする!」
直虎「しかし、但馬はどう言うかの」
そこへ、六左衛門が口を挟んだ。
あの日、見知らぬ女が山の小屋を訪れ、追っ手が来ることを知らせてくれた、という話を聞いたのだという。
六左衛門「それがどうも、人相などを聞くと、なつ(山口紗弥加)なのではないかと…」
この話が本当だとしたら、裏でなつを動かし、龍雲丸を逃したのは政次に違いない。
直虎は急いで小野の屋敷に向かった。
直虎が問いただすと、政次はゆっくり語った。
政次「引き渡してしまえば、殿がまた大騒ぎされましょう。それが面倒であったまで」
直虎「では、あの者たちを召し抱えるのには反対か」
政次「すでに心は決まっておられましょう」
直虎「そんなことはない。こたびのことについては、政次の考えに従う。政次が誰よりも井伊のことを考えてくれておるのは明らかじゃ」
政次「…反対はいたしませぬ」
直虎は、心の中で喜び叫んでいた。
すぐに、男たちをまとめて家来にしたい旨を龍雲丸に申し出た。
直虎「よかったら考えてみてくれぬか。返事は銭を渡すときでよいゆえ」
しばらくして、龍雲丸が数人の男を引き連れてやってきた。
皆の晴れやかな顔を見て、受け入れてくれるのだと直虎は直感した。
直虎「当家への奉公の件じゃが。返事は?」
龍雲丸「…断りまさぁ」
井伊家の家臣たちはもちろん、龍雲丸の手下たちも驚きうろたえた。
手下「侍になるんじゃなかったんですかい!」
龍雲丸「てめえらがなる分には止めねえよ。ただ、俺は…やっぱり武家勤めはできねえわ」
直虎「な、何ゆえじゃ! 訳は!」
龍雲丸はのほほんと答えた。
「そりゃあ、空に雲があったからでさ」
直虎「なんじゃあ、それはぁっ!?」
その場にいた皆がぽかんと口を開けている。
ただ一人、政次だけは小さく噴き出した。
すぐに直之が顔を真っ赤にして怒鳴った。
直之「さようにふざけた言いぐさが通ると思うておるのか!」
龍雲丸「分かってもらわんでもええですんで」
六左衛門が直虎の心を代弁するように、ゆっくり語り出した。
「もう少し分かるように述べてくれぬか。われらはそなたが来るのを楽しみにしておったのじゃ。これではさすがに納得がゆかぬ」
龍雲丸「やはり柄じゃねぇと思うんでさぁ。んじゃ」
大河ドラマの小説版はこちら。
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