それから、龍雲丸たちの一団はよく働いた。
直虎「よく、あのような木が切れるの」
大きい木が倒れる様子を感心していたところ、龍雲丸がやってみますか、と声を掛けた。
大きな鋸を使って、六左衛門(田中美央)と二人で両方からひいてみるが、うまく切ることができない。
その様子を見かねた龍雲丸は、直虎の背後に回ると、直虎の手に手を重ねた。
当然、体は密着した格好になった。
直虎はドキッとし、胸が高鳴ったのを感じた。
龍雲丸「いいですか。手はこう! 聞いてますか?」
直虎のすぐ横に、龍雲丸の顔がある。
龍雲丸「そうそう。そして、腹の下に力を込めて」
鋸の歯が木に食い込んだ感触がわかったが、直虎はそれどころではない。
男の匂いと体温を感じて、フラフラになりそうだった。
その瞬間、龍雲丸をはねのけ、体を離していた。
それ以降、直虎は伐採現場に行くことを控えていた。
直虎「煩悩など、滅したと思うておったが…」
しばらくすると、彼らの悪評が聞こえてきた。
男たちの誰かが、博打場を開いているというのだ。
そこには百姓までも入り浸りになってしまった者もいるのだという。
そんな話を聞いた直之が、龍雲丸の手下を引っ立ててきた。
直虎は仕方なく龍雲丸を呼びつけた。
龍雲丸の顔を見るなり、身体は火照り、心臓が高鳴っているのを必死に隠しながら言った。
直虎「頭。井伊の者たちはこういったことに慣れておらぬのじゃ。その分、のめり込みやすい。一年ほど前は徳政を求め、一揆すら起こりかねぬ様子だったのじゃ。それをさまざま手を打ち、ようやく落ち着いたところでな。…博打は控えてもらいたい」
龍雲丸「俺らがやんなくても、陰でやってるやつもいると思いますがね」
直虎「…控えてもらいたい」
龍雲丸「へいへい。分かりましたよ、お殿様」
直之「なんじゃあ、その口ぶりは!」
怒った直之が詰め寄りそうになるが、それを無視して龍雲丸は帰っていった。
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