5月7日放送の大河ドラマ おんな城主 直虎
第18話「あるいは裏切りという名の鶴」の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第18話「あるいは裏切りという名の鶴」あらすじ
小野政次(高橋一生)の汚い手に、直虎は歯を食いしばってこらえた。
政次「このまま駿府へご同行いただき、太守様の前でじかにお話いただく」
政次は直虎(柴咲コウ)にとどめを刺すつもりだ。
とっさに中野直之(矢本悠馬)が鞘を払った。
直虎「之の字!」
そう言うと、直之の前に立ちふさがった。
直之「斬ってしまえばよろしゅうござる!小野の息の根を止めねば、かようなことが繰り返されるばかり」
直虎「斬ればもっと面倒なことになる! こらえよ!」
直虎は考えを巡らせた。種子島そのものがなければ、謀反を立証することはできないはずだ。
直虎「心得た。ただしそれはここに置いていけ。われが降りれば謀反を駿府に訴えはせぬのであろう。ならば無用のはずじゃ」
政次は受け入れた。
寿桂尼(浅丘ルリ子)に会って、許しを乞う。直虎は心を決めていた。
後見も、自身を差し出してもかまわないが、虎松(寺田心)は何が何でも守り抜く決意を持っていた。
ところが、駿府に着くと意外な人物が待っていた。
直虎「方久!ここで何をやっておる」
方久「商いに決まっておりましょう。今川様に、種子島を五平ごと売り渡してまいりました」
方久(ムロツヨシ)は、9割方完成している種子島を見せ、続きを駿府で作らせてもらいたいと願い出たのだ。
しかも、太守様に頼んでみよとの指図を直虎から受けたということにして。
これなら、謀反をたくらんでいると思われることはないだろう。
今川氏真(尾上松也)は迷うことなくこの話に乗ったのだという。
直虎「方久、でかしたぞ!」
方久「なあに、銭のにおいに従ったまでにございますよ」
直虎は、寿桂尼にも氏真にも会う必要がないまま駿府を後にした。
とはいえ、何かすっきりしない。
井伊谷に戻ると、直虎は南渓(小林薫)に打ち明けた。
直虎「私は助けられてばかり。人集めでは政次に、こたびは方久に救われたまでのことで…」
南渓は『孫子』などの数冊の本を、直虎の前に置いた。
南渓「当主を継ぐような者なら、皆学んでおるようなものじゃがの」
直虎「政次もこれを学んだのですか」
南渓「そうじゃな」
これを読めば、政次の手の内が分かるかもしれない。気合いを入れて読もう。
南渓に礼を言うと、書物を持って居館に帰った。
居館では、祐椿尼(財前直見)のところに政次の義妹・なつ(山口紗弥加)が尋ねてきていた。
直虎「但馬と一緒に暮らすのは、息が詰まらぬか?」
なつ「義兄は私どもを気遣って、政の話はなさいません。優しい人にございますゆえ」
直虎が聞き返すと、なつは姿勢を正して語りだした。
なつ「お立場として義兄と相容れぬことは致し方ござりませぬ。なれど、どうかそれが義兄のすべてとは思わないでくださいませ」
直虎は続きを聞こうとしたが、なつは打ち切るように立ち去っていった。
なつが帰ると、祐椿尼が切り出した。
祐椿尼「ずっと不思議に思うておるのですが、但馬はなぜ嫁をもらわぬのですかね」
乗っ取るなら、自らの家を大きくしたいはず。政次は嫁ももらわず子もつくらない。
直虎「確かに…」
祐椿尼「そうでしょう。何ゆえあのように後見に執着するのでしょうか」
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母の言葉が引っ掛かったまま、直虎は自室に戻った。
南渓から借りた書物を読んでいると、とある言葉が目に入った。
「敵を欺くには、まず味方から…」
それを見た瞬間、これが答えなのだと閃いた。
政次はずっと欺いていたのではないのか…。
種子島の件もそうだ。
わざわざ後見を降りるよう迫る必要はない。最初から駿府へ注進に行けば済むはずだ。
回りくどいことをしたのは、直虎も虎松も救いながら、後見から降ろすためだったのではないだろうか。
今川には犬のように見せかけ、井伊からは嫌われることで、一人で矢面に立ち、自分の手で井伊を守るつもりではないか。
直虎はいつしか、政次の姿を探し求めていた。
政次は龍潭寺の井戸端にいた。
直虎「敵も味方も欺くことで、守る。そういう手があるのじゃな、兵法というものには」
口を開かず不思議な表情をしている政次に、直虎が続ける。
直虎「われは種子島を備えることで、井伊を守ろうと思っておった。それが今川のもとに渡り、この先どうなるか分からぬ。そなたがわれなら、どうする?」
政次「何ゆえ、それがしにさようなことを?」
直虎「誰よりも深く、井伊を守る策を考えておるのは、そなただからじゃ」
睨み合うかのように視線を合わせていた二人だったが、やがて双方とも優しい表情に変わっていた。
直虎「政次。われはこの身を直親の移し身とすることを、誰に強いられるでもなく己で選んだ。この手で井伊を守ると、われは己で決めたのじゃ」
政次はじっくり聞いている。
直虎「われが女子であるから守ってやらねばならぬとか、つらい思いをせずともすむようになどと思っておるのなら、お門違い。無用の情けじゃ。われをうまく使え。われもそなたをうまく使う」
風が駆け抜け、木の葉がざわめく。
政次「私ならば、戦わぬ道を探ります。戦に戦わずして勝つ。もしくは戦いに及ばずともすむよう死力を尽くす。それが大国に挟まれた小さな井伊が生き延びる唯一の道かと考えております」
直虎「…よいな。実に但馬らしい…」
二人はかすかに笑みを交わした。
政次はすぐに真顔になると、語りだした。
政次「武田の嫡男・義信様が、謀反のかどで父君の信玄公に幽閉されたようにございます」
直虎「…父が息子を幽閉したのか?」
政次「大事なのはそこではございませぬ。義信様は太守様の妹君の夫。つまり、武田と今川との同盟が崩れかけてきておるということです。いつとは言い切れませぬが、いずれ、武田は今川に牙をむいてきましょう」
直虎「戦わずにすますためには、武田の動きに目を配っておきたいということか」
政次「武田…そして、松平にございます」
直虎には、政次の心の中にあるもう一つの真意が見えた気がした。
井伊家は今後、今川家と武田家、松平家の思惑に揺り動かされることになるだろう。巻き込まれ、命が危うくなる前に、後見から降りろ。
きっとそう考えているに違いない。
政次の中に秘めた優しさが、直虎の胸にしみた。
季節はいつしか秋を迎えていた。
井伊谷では初めての、綿の収穫が行われていた。
実りの情景と領民たちの収穫の様子に、領主として格別のものが込み上げていた。
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