久しぶりに江戸から帰国した斉彬が赤山を従えて磯の別宅にやってきた。座敷には斉興と家老の
赤山が砲術訓練にかかる経費の試算を斉興の前に置く。藩士が2千人も参加する大掛かりな訓練に、調所は反対した。
調所「こげな大仕掛けな砲術訓練など、とんでもなかこっでございもす。莫大な金を要しますゆえ、お家の台所が再び、火の車ちないもす」
斉興「そん通りじゃ。先々代の500万両の借金、こん調所広郷の大働きにより、ようやく目途がたったとじゃ」
斉興は訓練を認める様子はない。気まずい雰囲気に赤山はハラハラしている。
斉彬「父上、のんびりしているうちに薩摩は、日本は、清国のように異国に乗っ取られてしまいますぞ!」
こう言い捨てると、斉彬は出ていった。
正助が城に上がって *記録所書役助に仕えることになった。
藩の文書を取り扱う記録所の補佐係
西郷家で就任祝いが行なわれ、正助の父・次右衛門や母・福をはじめ郷中の仲間たちが顔をそろえる。そこへ赤山が鯛を持ってやってきた。
お供の下女が祝いの酒を正助に差し出す。その親しげな笑顔に、正助は訝しがる。
正助「あ…あの…どこかでお会いしもしたか」
男の子のふりをして妙円寺詣りに加わった、糸だった。学問がしたいということで、赤山の家で下働きをしていたのだ。正助は向学心があり、気立てのいい糸が気に入った。
酒もまわり、話題は薩摩藩の将来になった。吉之助は重い年貢に苦しむ百姓たちを憂い、斉彬様が藩主になれば、民百姓の苦しみをわかって下さるはずだ、と言い、斉彬を担ぎ上げてはどうかと提案した。
正助「…今や500万両もの借金を返済してお家の財政を立て直した調所様んご威光は絶大じゃ。そん調所様が嫌うちょっ斉彬様をいま担ぐっとは危うすぎっど」
吉之助は反論しようとするが、酔った郷中の仲間たちが好き勝手に騒ぎ出した。
「殿は調所様の言いなりじゃっで」
「お側女のお由羅様にもの」
「畏れ多くも薩摩のおんあるじじゃっど。女の言いなりになっはずがなか」
祝いの宴は乱闘になってしまった。
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