大河ドラマ 真田丸 第1話『船出』あらすじとネタバレ

先見の明

緊迫した戦況が続くため、昌幸が真田屋敷に帰るのはひと月ぶりだ。側近の高梨内記らを率いて戻り、久しぶりに家族と顔を合わせたというのに、薫の表情が暗い。この日、新府にいた木曽義昌の母親と子どもたちに磔の刑が執行され、同じ人質という立場にいる薫の心に影を落としている。

「一体、武田のお家は、これからどうなるのです」
「新府城は、この真田昌幸が知恵の限りを尽くして築いた、天下に聞こえた名城だ。この新府こそが、最も安全な場所じゃ。安心せい。この真田安房守がいるかぎり、武田が滅びることは決してない。織田信長の好きにはさせん!」
昌幸は自信満々の態度で薫たちを安心させ、信幸と信繁には大事な話があると居室へいざなった。
「武田は滅びるぞ」
昌幸が重苦しい口調で告げた。織田の勢力は「長篠の戦い」のころの比ではないほど強大になっている。信繁が敵情を探ったことが役に立つかと思いきや、昌幸の関心は早くもほかに移っている。
「わしはこの城を捨てることにした」
新府にいれば安全だと豪語した舌の根の乾かぬうちに、新府城は未完成で、予想より早い織田の侵攻に耐えられそうにないと言う。
「源三郎、源次郎、よいか。これは、わが真田家にとって未曾有の危機。一つ打つ手を誤れば、真田は滅びる。この苦難、われら一丸となり、どんなことをしてでもこれを乗り切る。心しておけ」

信幸と信繁は、新府の城下を見下ろす山の尾根に立った。真田家は、長男の信幸の幼名が源三郎で、次男の信繁の幼名が源次郎と紛らわしい。定石を踏む質の信幸は、昌幸の独特な発想を器の大きさの証だと受け止めつつ、しばしば困惑する。一方、ときに奇をてらうのを楽しむ信繁は、命に従っていれば間違いないと楽観している。

三十郎が、息を切らして山道を登ってきた。
「源氏様あるところ、三十郎あり。目を話すなと、父に言われておりますので」
三十郎の父・矢沢頼綱は昌幸の叔父で、真田家を支える重鎮だ。

三人で新府城下を眺めていると、山を登ってくる勝頼、昌幸、梅雪の姿が見えてきた。山腹にある持仏堂に向かうのだろう。信繁たちは持仏堂の裏手に回り、勝頼たちの様子をうかがった。持仏堂では、勝頼が手を合わせ武運を祈っている。その後ろで、昌幸と梅雪も手を合わせている。
「父上が築きあげたこの国を、わしは滅ぼしてしまうのか」
「御屋形様にはわれらがおりまする」
昌幸が励ますと、勝頼の表情がようやく緩んだ。

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