直虎が行方不明になり、すぐに行動をおこしたのは六左衛門(田中美央)だった。
直虎の捜索は方久と気賀の商人たちに任せて、六左衛門は井伊の居館に戻った。
話を聞いた直之(矢本悠馬)は、喧嘩腰で六左衛門に詰め寄った。
直之「夜が明けてもお戻りにならぬなど、かどわかしに決まっておろう!」
拐かし(かどわかし)
人をだまして連れ去ること出典:Weblio類語辞書
そこに方久が急いで戻ってきた。
方久「殿の銭入れとともに、かような文が届きました」
殿様お身柄と引き換えに、明日申の刻、銭百貫、絵図の示すところに届くるべきこと。応じる印に、赤い旗を中村屋店先に立つるべし。
中村屋というのは、方久と親しい商人の店だ。
政次(高橋一生)が冷静に口を開いた。
政次「とりあえず、払うと返事をしてはいかがかと」
直之がすぐに噛み付いた。
直之「ならん!かようなものに断じて屈してはならぬ。武士の名折れじゃ!」
直虎は真っ暗な地下牢に閉じ込められていた。
そこに何者かがろうそくを手に近寄ってきた。
直虎「お主、何ゆえ賊などしておる。まともに働く道などいくらでもあるじゃろうが」
賊の者「あんたに言われたかないね。領主なんてな、泥棒も泥棒、大泥棒じゃねえか」
直虎「何ゆえ、われが泥棒なのじゃ!」
賊の者「ガキでも分かる話でさぁ。百姓の作ったもん召し上げてんじゃねえか」
直虎「…年貢を取るのは、井伊の土地だからじゃ。井伊の土地を貸しておるからじゃ!」
賊の者「なんであそこはあんたの土地なんだよ」
直虎「それは…井伊が鎌倉の公方様よりあの土地を任されたからじゃ」
賊の者「それが泥棒の始まりだろ? あんたの先祖にやたら喧嘩が強えか調子のいいやつがいて、勝手にぶんどったってだけじゃねえか。武家なんてのは、何代も続いた由緒正しい大泥棒じゃねえか」
直虎は何も言い返せない。
賊の者「俺らは武家や、そこに群がるやつらからしか盗まねえ。つまり、泥棒から泥棒してるってだけだ。あんたらに比べたら、かわいいもんだ」
直虎は戸惑っていた。男の言い分もどこか理屈が通っていると感じたからだ。
が、その瞬間、鋭い痛みと同時に、直虎は眠りに落ちてしまった。
直之ら井伊家の家臣たちは、指定された小屋にやってきた。
直之「銭を持ってきたゆえ、人質を返せ! 殿を返せ!」
小屋に押し入った。ところが、寝入っている直虎の姿しか見当たらない。
直之「謀られたかもしれぬ。狙いは馬じゃ!」
馬を見張っていた傑山(市原隼人)は、男たちが近寄ってきている気配を感じた。
傑山は威嚇の矢を放ち、男たちは散らすように逃げていった。
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