2月12日放送のおんな城主 直虎
第6回「初恋の別れ道」の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第6話「初恋の別れ道」あらすじ
井伊谷に戻ってきた亀之丞が最初に取り掛かったのは、「元服の儀」だった。
亀之丞は、元服は故郷でと考えていた。それを聞いた井伊家の人々は大いに喜んだ。
「本日より、井伊肥後守直親と名を改めるよう」
一同は感無量だったが、一人複雑な思いだったのは小野政次だった。
政次は、亡き父・政直の跡を継ぎ、家老となっていた。
幼なじみの帰還は嬉しいが、奥山朝利の娘との縁組みが破談になってしまう。
つまり、自分の子が井伊家の当主になるという未来がついえてしまうのだ。
元服の儀式が終わり、宴が開かれた。
次郎との結婚を熱望している直親は、次郎の還俗はいつになるのかと直盛に尋ねた。
直盛が答えあぐねていると、政次が答えた。
「恐れながら、今川の太守様に直親様の帰参をお許し頂くのが先決かと存じます。
今川にとりましては、直親様は謀反人の子。まずはこちらをお許し願い、次郎様のことはその次かと」
直盛はその場で判断することは避けた。
左馬助を呼んで、駿府に向かって今川の様子を探るように命じた。
龍潭寺では、南渓と次郎が向き合って、言葉で与える課題「公案」の最中だった。
「昔な、超という国に道威という王がおり、中と伯という2人の大臣が仕えておった。ところが争いが起こっての。道威はどちらか1人を追い出さねばならぬようになったのじゃ」
道威は、中と伯に2つずつ饅頭を渡した。2人ともその場で1つ食べ、中は残り1つを腹をすかせた子供に与えた。伯はそれを大事に持ち歩き、いつしかカビさせてしまった。
「さて、道威はどちらに大臣を続けさせたかの?」
考えるまでもない、と次郎は即答した。
「やはり中ではないのですか?食べられぬようにしてしまっては、意味がありませぬ」
南渓は、にやにやと笑っている。
「違うのですか?」
「道威が選んだのは、饅頭をカビさせた伯だったのじゃ。さて、それは何ゆえじゃと思う」
南渓は饅頭を2つ、次郎の前に差し出した。
駿府から戻った左馬助は、直盛に報告に赴いた。
今川は尾張攻めの最中であり、何か事を願い出れば、代償に重い軍役を課されるだろう。
「亀之丞の帰参までは願い出るとしても、次郎の還俗となると、何を要求されるか分からんということでな。直親すまぬ。汲んでくれ」
「無理を申し、ご迷惑をおかけいたしました。おとわ様のことは二度と申しませぬ」
直親は直盛に向かって一礼した。
元服して一層凛々しくなった直親を見て、次郎の心は乱れていた。
直親は満面の笑みでおとわに話し掛けた。
「還俗がかなわぬ話は聞いたか?」
おとわには笑顔の意味がわからない。
「ここはもう、死んで一緒になるしかないな」
ばかなことを申すな!と、おとわが返す。
「死ぬのはおとわだけだ。
一緒になれないのは、次郎が井伊家の惣領娘だからだ。死んだことにして名を変え、別人として生きればよい」
さらに直親は続けた。
「おとわと夫婦になり子を作るぞ。ほかに子がなければ、その子を跡継ぎにということになる。すべてうまく収まるではないか」
川名の隠れ里でかくまってもらえるよう、直平にも話を通してあるという。
ただ、そうなると両親には数年は黙っておくことになるだろう。
父母の悲嘆を思うとつらい。次郎は黙り込んでいる。
「おとわは悔しくないのか。10歳から寺に閉じ込められ、なぜ自分だけと思わぬのか?」
それは仕方ないだろうと答えた。
「しかたあるまい。そうやって何でも諦めて、一生くすぶったまま生きていくのか?」
次郎の心が乱れた。
いつしか、諦める癖がついていたのかもしれない。
一度きりの人生だ、一度だけ賭けてみよう。
直親をまっすぐ見つめて決心した。
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何日か経つと、川名の準備が整ったという知らせが届いた。
井伊の居館や、井伊谷を見渡せる丘の上など、懐かしいところを歩き回って別れを告げた。
最後に、寺の仏殿で御本尊に礼を述べて、自室に戻った。
あとは、遺書を書けば仕上げになる。
次郎は文机に向かい、筆をとった。
机の上に、2つの饅頭が置かれている。
南渓からの公案が頭をよぎった。
「饅頭をカビさせたは伯を選んだのはなぜ…?」
次郎は筆を置き、考え込んだ。
翌朝。待ち合わせ場所に現れた次郎を見て、直親は驚いた。
旅装のはずの次郎が法衣のままで、荷物も何も持っていないからだ。
「直親。おとわは死なぬわ。
直親とわれは、1個の饅頭なのじゃ」
直親にはさっぱり分からない。
2つの饅頭を一度に食べてしまったり、人に与えてしまってはなくなってしまう。
1つを取り置けば、本当に困ったときに食べたり与えたりすることができる。
「還俗するのは、俺と一緒になるときではなく、俺に何かあったときということか。
おとわはそれで良いのか!
娘であることの喜びも捨てて、お家の危機の駒となり、まことにそれでよいのか!」
朝まで考え、悩み抜いた結論だ。覚悟したのだ。
「一度きりの人生と言うたではないか。一生日の目を見ることなどないかもしれぬぞ!」
「それこそ上々であろ?われがカビた饅頭になることこそ、井伊が安泰である証しであろ?」
直親の目から少しずつ光が消えていくのがわかった。
次郎も目をそらし
「…ではな」
と言い、きびすを返した。
その瞬間、背後からきつく抱き締められていた。
「置き去りにしてすまぬ…」
直親の息が頬にかかった。
次郎は喜びで気が遠くなりそうだった。
やはり女でいたい。
そのとき、直親の腕が離れていった。
「葬らねばならぬのは、俺の心だ…」
今川の許しを得たことで、直親は正式に井伊に帰参した。
直盛の養子となり、次は嫁取りが急がれた。
正室の座を空けておくと、直盛のように今川に関わる誰かを押し込まれる可能性があるからだ。
評定の席で、奥山朝利が切り出した。
「前に、わが娘を小野但馬殿の妻として、井伊の家督を継ぐというお話があったかと」
直親は政次をちらりと確認すると、笑顔で答えた。
「井伊のためによろしきお方ならば、喜んで」
直親は、井伊の居館から一里も離れていない祝田村に屋敷を構えた。
そして、朝利の娘・しのを正室として迎えた。
次郎は、その話を風の噂で聞いた。
俗世を離れ、これで本当に次郎法師になったのだと実感したのだった。