1月22日放送のおんな城主 直虎
第3話「おとわ危機一髪」の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
おんな城主 直虎 第3話「おとわ危機一髪」あらすじ
出家すれば誰とも結婚せずに済む。
和尚様のように、頭を丸めればいいんだ。
とわは剃刀で髪を切り落とし始めた。
何度も手が滑り、血だらけになってしまった。
そんなおとわの姿を見つけた直盛(杉本哲太)は、驚いて絶叫した。
これが新たな火種となるのだった。
これでは夫婦約束など無理だと、居合わせた小野和泉守(吹越満)は言った。
すぐに今川家に注進した。
その結果、評定の場が設けられた。
度重なる井伊家のふるまい言語道断。
このうえは忠義の証しに、息女・とわを人質として遣わすこと。
万一この義に背くことあらば、成敗もやむなし
直盛は生気のない声で書状を読んだ。
これに対し、直平(前田吟)は猛然と牙をむいた。
「今川に人質を渡すくらいなら、井伊は戦に及ぶとそう伝えてこい!もちろん小野の家も皆殺しにする!」
直盛は大いに頭を悩まされることになった。
かわいい一人娘を人質になど断じて出したくはない。
しかし、とわを人質に出さなければ井伊家はお取り潰し。
行けば行ったで直平が挙兵し、結果、お取り潰しになろう。
どちらにしろ井伊家は消滅してしまう…
苦しむ父を見ていられなくなり、とわは龍潭寺の南渓和尚(小林薫)のもとを訪れた。
「和尚様のせいじゃ!和尚様が、答えは一つではないと言うたから…」
南渓は一計を携え、井伊の居館へ向かった。
「いっそのこと、おとわの出家を今川に認めてもらってはどうかと」
井伊家は跡継ぎ不在であることには変わらない。
次の当主を決めるのは、今川の意のままだ。
そこに気付かせることができれば、とわは出家を許され、井伊谷に帰ってこられる。
それが南渓の苦肉の策だった。
あとは、ほとぼりが冷めた頃に、とわを還俗させればよいという南渓の案を、直盛は受け入れた。
とわは、左馬助(苅谷俊介)、たけ(梅沢昌代)とともに駿府に旅立った。
一足先に出立していた南渓は、駿府にある寺で太原雪斎(佐野史郎)と対面していた。
同じ臨済宗の先達であり、今川家の内政・外交・軍事で義元を補佐する最高顧問の軍師である。
南渓は、雪斎を口説き落とせれば勝ったも同然だと考えていた。
「太守様にはお伝えしておくが。やはり人質として取っておけ、とお考えになるであろうがの」
雪斎の返答は、期待できるものとは言えなかった。
南渓は次の一手を考え、とわの到着を待った。
駿府に到着したとわは、賑やかな街に驚き、きょろきょろと辺りを見回しながら歩いた。
駿府の町並みはきらびやかで洗練されていた。
人々の服装も垢抜けている。
とわの目には、全てが新鮮な驚きだった。
何度も訪れている左馬助が
「諸国との商いも盛んでございますから、人も物も集まってまいります。京の公家も太守様を頼ってやって来たり」
と言った。
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とわたちは、直平の娘で、かつて井伊家から人質に出された佐名が暮らす関口家の屋敷を訪れた。
屋敷の控えの間にいるとわたちのもとに、美しい少女がやってきた。
この家の娘の瀬名(菜々緒)と名乗った。
とわが頭巾を取って一礼すると、ぼさぼさの頭を見た瀬名が笑い転げた。
「瀬名姫は、蹴鞠をなさるのか」
「蹴鞠がうまくなれば、龍王丸様の妻になれるのです」
今川にはそんな習わしがあるのかと、とわは驚いた。
対面の間に佐名(花總まり)が現れた。
とわは慌てて頭を下げた。
佐名は美しかったが、冷たく寂しげで、不幸な印象を受けた。
別の部屋に案内されて、たけと2人になったところで、とわは気になっていたことを尋ねた。
「佐名様は、井伊のお味方ではないのか?」
「まだお分かりにならぬとは思いますが。佐名様は太守様のお手つきとなったのです」
お手つき…とわの頭に浮かんだのは、鬼ごっこのときに鬼の手で乱暴に突かれる姿だった。
「そのお手つきというのは、きつくか?痛くされたのか?」
「そこまでは存じ上げませんが、何度も何度も数えきれぬほどでございましょう」
「数えきれぬほど!」
「そのあげく、飽きたら雑巾のように捨て置かれたのでございます。佐名様に井伊を恨むなというのは難しゅうございましょう」
とわは絶句した。だからあんなお顔をしておいでなのか…。
関口の屋敷の裏門に、南渓がやって来た。
「これを佐名に渡してほしいのじゃ」
佐名は、南渓の妹にあたる。
今川義元の生母である寿桂尼に、とわの出家を進言してもらうよう佐名に頼むつもりのようだ。
寿桂尼は、今川で大きな力を持つ人物だという。
とわは佐名の部屋へ出向いて、南渓の文を手渡した。
佐名は文を引き裂き、叩きつけた。
「ようわれにこんなことを頼めたものじゃ。なまぐさに恥を知れと申し伝えよ!」
憤怒の激しさに、とわはあ然となった。
裏門で待っている南渓に、引き裂かれた文を見せた。
南渓はたいして失望した様子も見せずに語った。
「怒るということは、揺れているということ。きっと思い直して寿桂尼様にとりなしてくれるに違いない。佐名はそういう性分じゃ」
翌日、とわたちは義元に謁見すべく、今川の居館に出向いた。
仲介役の小野政直が姿を見せた。
もはや時がない。今川の人質になるしかないのか…
覚悟しかけたそのとき、何者かが激しい足音で廊下を駆けてきた。
今川の家人が現れ、えらいことを口にした。
「小野様、川名のご隠居様なるお方に、ご嫡男がさらわれたそうです!」
政直が血相を変え、急いで出ていった。
これが太守様の耳に入ったら大変なことになる。
井伊家は即刻潰されてしまうかもしれない。
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そのとき襖が開いた。
尼僧に付き添われた、上品な老女(浅丘ルリ子)が立っていた。
「大方様にあらせられる」
寿桂尼様だ!とわは慌てて平伏した。
「面を上げよ。人質に来た井伊のとわとは、そちか?
太守様はお取り込み中のようじゃ。待つ間、蹴鞠でも見ぬか?」
縁側の襖が開くと、庭に大勢の人が集まり、蹴鞠に興じている。
その中に瀬名の姿を見つけたとわは
「瀬名様…」と呟いた。
すると寿桂尼はおや?と顔を向けた。
あれは子供らの蹴鞠にいつも入りたがるのだという。
勝ったら褒美に龍王丸の妻にしてもらうのだと言っているそうだ。
義元の嫡男・龍王丸に勝てば、なんでも褒美がもらえる。
そう聞いたとわが庭に目を向けると、近習たちに囲まれた小さい男児の姿が見えた。
「これだ!」
とわは裸足のまま庭に駆け下りると、龍王丸の前へ飛び出した。
「われと一番、勝負をお願い申しまする」
とわは挑戦を許された。
とはいっても、蹴鞠などやったことがない。
あっさり負けてしまい、皆に笑われた。
「もう一度お手合わせ願います!」
負けた。
また挑んだ。
負けた。
何度も食い下がった。
次第に龍王丸の顔から笑いが消え、息は上がり、足元はおぼつかなくなった。
そして、龍王丸の蹴った鞠が、大きくそれて転がった。
とわは龍王丸に近づいて、褒美をくださいと迫った。
「こんなもの、勝ったとは言わぬ!」
とわに背を向け去ろうとする龍王丸に、とわは飛びかかる。
龍王丸は転んでしまい泣き出すが、とわは頓着することなくさらに続けた。
「われは褒美がないと困るのじゃ!井伊が潰れてしまうのじゃ!」
政直が鬼の形相で止めに入った。
その瞬間、周りの家臣たちが次々とひれ伏した。
「太守様にございます」
たけが言うと、とわも急いで平伏した。
とわは顔を上げると、絵巻物で見たことのある公家の格好の男がいる。
これが義元公(春風亭昇太)なのか。
とっさにとわが訴えた。
「井伊直盛が娘、とわと申します。龍王丸様に勝ちました。ご褒美を頂きたく、おとりなしを願いまする」
その場にいた者たちがどよめいた。
「何度も勝つまでやめない、こいつは卑怯者にござりまする!」
龍王丸が叫んだ。
義元が扇を口元に当てて小さく呟き、供の者が言った。
「何を所望じゃ」
とわは、井伊に返していただきたいと言った。
「姫、無体な望みを…」
政直が叫んだ。
そのとき、義元のそばにいた細身の僧侶が
「その者は粘り腰で、実によい戦いをしました。よい戦いをした者には褒美を取らすのが武門の習い」
と言った。このお方が太原雪斎様だろうか…。
さらに、隣にいた寿桂尼が続けた。
「龍王にも見本を示さねばなりませぬしね」
すると義元は扇でとわを指し、追い払うように振りかざした。
「褒美を遣わす。去ってよいとの仰せじゃ」
供の者の言葉に、とわは驚いた。
と同時に直感した。
佐名様が、寿桂尼様が、そして雪斎様もわれの味方をしてくれたのだ。
今川の居館の外で、南渓と左馬助が待っていた。
「ご無事だったのですね!」
褒美をもらったと笑いながら、今川の家臣からもらった書状を左馬助に手渡した。
一女とわの出家をもって本領安堵とす
左馬助が読み上げた。
「でかしたぞ!」
南渓が叫び、大手柄だと言って喜んだ。
夕日に照らされた金色の顔は希望の色だ、
と、とわは思った。