1月24日放送の真田丸 第3話『策略』の詳細なあらすじです。
ネタバレ注意!
あらすじ
真田の本領は、信濃の東の一角、小県郡にある。天正10(1582)年3月、昌幸たちは真田の郷へ戻った。武田の旧領をねらう織田と、死守しようとする真田との緊迫状態が続いており、昌幸は、信尹、矢沢頼綱、信幸を集めて議論した。
「のるかそるか、わしは信長という男に賭けてみたいのだ」
昌幸が決意を示すと、頼綱が豪快に笑った。
「思えば、お主の父親も、家督を継いで間のない信玄公に賭けた。そして真田の礎を築いたのじゃ」
信繁が居室にいると、軍議を終えた信尹がやって来た。信尹は常に兄・昌幸の手足となって働き、その仕事ぶりに自負を持っている。
「武田に仕えておきながら、上杉に取り入り、さらに北条と通じるなど、わしにしかできぬ仕事」
「叔父上は、私の鑑とするお方です。私も、兄・信幸にとって、そんな弟でありたいと思います」
信繁がてれくさそうに言うと、信尹がほほえんだ。
同じ時分、昌幸と高梨内記がひそかに話し合っていた。小県は真田、室賀、禰津などの地域に分かれ、それぞれ国衆によって治められている。
武田家に重用された真田も、小県では国衆の1人だ。だが昌幸は、一筋縄ではいかない国衆をまとめ、それを手土産として織田に乗り込む算段を立てていた。真田を高く評価させるためだ。
家康は武田家の軍事拠点だった高遠城に入り、激しい戦闘の爪痕が生々しく残る城を洗い清め、側近で猛将の本多平八郎忠勝、本多正信とともに、城主・仁科信盛が自害した場所に手を合わせた。
勝頼の首は、翌日、信濃に乗り込んでくる信長の実検が済んだのちに、手厚く供養するつもりだ。これには、正信の緻密な計算が働いている。
「これからは、生き残った武田の家来衆の心をつかむことが、肝心」
家康が供養したと、甲斐や信濃の隅々にまで広めれば、効果があるはずだ。
信濃に入った信長の軍勢は進攻が早く、国衆はどの大名につくか決断を迫られている。そこで、真田屋敷に室賀正武、出浦昌相など近隣の国衆が集まった。今後を左右する話し合いだけに、昌幸の考えに従い織田につくのが最善か、激論となった。ことに正武は、昌幸が主導権を握っていること自体が気に入らない。結局、この日は物別れに終わった。
「信長が、わしを国衆の惣代と認めれば、小県はわしのものだったのに。残念じゃ」
昌幸は口ほどには落ち込んでいないようで、別の手段を模索し始めている。昌幸の切り替えの早さを、信幸は驚異の目で見ていた。
土産
信繁は丘の上に腰を下ろし、ふもとの家を眺めている。真田の郷の地侍・堀田作兵衛の家で、薪を選んであぜ道を行くのは作兵衛の妹・梅だ。
「お帰りなさい」と声がして、信繁の隣に若い娘が腰を下ろした。高梨内記の娘・きりだ。
信繁が目顔で梅を指し、櫛の入った箱をきりに差し出した。渡してきてほしいというのだ。
「なんで私がそんなことしなくちゃいけないの」
土産を渡すなら櫛がいいと勧めたのはきりだが、仲介するためではない。信繁はものを頼むついでのように、きりにはむき出しの櫛を手渡した。
「……しょうがないな」
きりは尻込みする信繁の手を引っ張り、梅のところに一緒に行った。
「源次郎様、お帰りなさいませ」
梅は、新府からの道中、苦難を切り抜けてきた信繁の無事を喜び、安堵の笑みを浮かべた。
信繁はてれてしまい、なかなか櫛の箱を梅に渡そうとしない。きりは面倒になり、信繁の手から包みを奪い取ると、「お土産だって」と梅に伝えながら勝手に箱を開いた。きりのものより、高価そうな櫛が入っている。梅がはにかんだ。
「これを私に?お心遣い、すみません」
信繁はドキドキして、気の利いた返事ができない。折よく、作兵衛が野良仕事から戻ってきた。
「源次郎様!よくぞご無事で!」
作兵衛は全身で喜びを表し、信繁に抱きついた。
そこに、仕事仲間の与八が駆け込んできた。隣村の室賀の者たちが勝手に真田の山に入り、薪を取ろうと枝打ちしていると言う。すぐに追い払おうと、作兵衛ばかりか梅までが鎌をてに駆けだし、信繁がすぐあとを追いかけていく。
残されたきりは、しばしあっけにとられていた。
策略
昌幸は、1通の書状を信幸に手渡した。
「これを上杉景勝殿に届けてくれ。真田の命運が懸かった書状である。お主がじかに届けるのだ」
上杉から、真田を取り込もうとする密書が届いたのだという。信幸は目を丸くした。
「真田は、織田につくのではないのですか!」
「世の中、何があるか分からん。打てる手は打っておく」
信幸は居室に行き、妻・こうを呼んだ。体の弱いこうは、奥の部屋で伏していることが多い。
「支度をしてくれ。旅に出る。真田の行く末を決める大事なお役目じゃ!」
信幸は手早く旅支度を済ませ、昌幸に同行を命じられたという佐助とともに越後へと出立した。
信幸の動きは、真田に探りを入れていた忍びの者によって、すぐに正武や昌相の耳に入った。
「真田昌幸、われらに織田を勧めておきながら、己は上杉につこうという腹」
昌相が苦々しげに言い、ちらりと正武を見た。
隣村の百姓たちが薪用の枝を切っている現場を見つけると、作兵衛の怒りが爆発した。
「てめえら、また来やがったな!」
隣村の百姓たちは薪を抱えて逃げようとし、信繁らと小競り合いになった。作兵衛が腕自慢なのは知っているが、信繁が驚いたことに、梅も鎌を振り回して果敢に戦っている。きりもついてきているが、全く動けない。信繁たちの勢いに負け、隣村の百姓たちはほうほうの体で逃げていった。
「おとなしく見えて、やるときはやるんですね」
信繁が感心すると、梅が恥じらった。親しげな信繁と梅が、きりにはおもしろくない。
皆で山を下っていると、林の中から、疲れきった様子の落ち武者が出てきた。松の夫・小山田茂誠だ。信繁は困り果てた。かくまおうにも、裏切った小山田一族の茂誠を、昌幸が許すはずはない。
先を急ぐ信幸と佐助の前に、突如、覆面の集団が現れて襲いかかってきた。覆面集団の背後にいるのは、深編笠をかぶった正武と昌相だ。
信幸は必死に懐の書状を守って応戦し、近寄ってきた佐助に「文を!」と手渡した。佐助は敏捷に覆面集団をすり抜け、追いかけてきた敵をかわそうととんぼ返りで宙を舞った瞬間、懐にしまった書状が地面に落ちた。慌てて拾おうとした佐助は、書状を覆面集団に奪われ、斬りつけられて血まみれで倒れ伏した。
室賀の屋敷に戻った正武と昌相は、昌幸が上杉に宛てた密書に目を通した。真田と上杉がつながっていることを示す動かぬ証拠だ。
「この密書、使えるぞ。これを手土産に、わしは信長に会ってくる。お主のことも推挙しておく」
正武が昌相を見てほくそ笑んだ。
信幸は真田屋敷に取って返し、昌幸にわびた。
「出浦昌相の顔を見ました。室賀正武も確か。襲ったのは、やつらの手の者です!すぐに奪い返してまいります」
信幸が自害をもいとわぬ決意で顔を上げたとき、廊下から声がかかり、昌相が部屋に入ってきた。
「見事に引っ掛かった。あの密書を持って、信長に会いに行くそうだ」
仰天している信幸に、昌幸が種明かしをした。昌幸の書状は、正武が奪うように仕向けたわなで、ご注進よろしく信長のもとに届けると踏んでいた。そもそも上杉からの密書など、はなからない。
「あれを読んで、信長はどう思う。この真田という男、方々から声をかけられている。うまみのある人物に違いない、わしも味わってみたいものじゃ。信長ならそう考える」
信幸は芝居が下手なため、事前に教えず、まずは味方から欺いたという顛末だ。
信幸が肩を落としていると、佐助がぴんぴんした姿で現れた。昌幸から見事な働きぶりを褒められ、佐助は風のように消えた。
「真田殿、お主が信長に賭けたように、わしは真田昌幸に賭けたのだ。信濃の行く末はお主にかかっておる。頼んだぞ」
昌幸と昌相が酒を酌み交わすのを、信幸は1人取り残された気分で眺めていた。
信幸が眠れぬ夜を過ごしているとき、信繁が力添えを求めにやって来た。しぶしぶ作兵衛の家に連れていかれると、松とその横でうなだれている茂誠がいる。信幸は非道なほどの駆け引きを目にしたばかりだ。茂誠と昌幸の間を取り持つことなどできない。
「腹を召されよ!」
信幸は刀を抜いて茂誠に自刃を迫った。だが、信繁がとりなし、松は身を挺して茂誠をかばった。信幸自身疲労困憊していて、たとえ茂誠が逃げたとしてもあずかり知らぬと、見て見ぬふりを決めた。
信長
その翌日、昌幸のもとに、信長から「参上せよ」との書状が届いた。
「源次郎、ついてこい。織田信長という男、真田を託すに足るかどうか、その目でしかと確かめてみよ」
信繁は気持ちが沸き立った。信幸も行きたいが、昌幸は「ならぬ」と一言のもとに退けた。
「生きて帰れぬかもしれんのだ。お前を残すのは、もしものため。わしらに何かあったときは、お前が、真田を率いていくのだ。あとは託したぞ」
昌幸に全幅の信頼を置かれ、信幸は嫡男としての自信を取り戻していく。
(続き:第4話)
真田丸の関連記事はこちらから。
大河ドラマ『真田丸』 関連記事まとめ