神様が書かせてくれた命ある線
大河ドラマ真田丸のオープニングは、土壁に力強い『真田丸』の文字が印象的です。
この題字を書いたのは書家ではなく、左官の挾土秀平さん。この3文字を書くためにものすごいエネルギーが込められています。そんな真田丸の題字を制作した舞台裏を、挟土さんが熱く語ってくれましたのでご紹介します。
挾土秀平とは
1983年技能五輪全国大会優勝。1984年同世界大会出場。平成25年度文化庁文化交流使。
2001年 14人を率いる「職人社 秀平組」を設立。
故郷である飛騨高山に拠点を置きながら、一般建築物から日本伝統家屋、洞爺湖サミットでのオブジェ等、左官の技術を活かして国内外で活躍している。
NHKでは、『プロフェッショナル仕事の流儀』『課外授業ようこそ先輩』『仕事ハッケン伝』等の番組で取り上げられている。
挾土秀平が語る題字制作の舞台裏
それが任務だと思った
大河ドラマは昔から好きだったし、実は題字に関わってみたいと思っていたんです。でも、そんなこと、おいそれとは言えないし、どんなルートで頼まれるのかも知らなかった。今回はプロデューサーの屋敷さんから、僕がホームページに載せているアドレスに依頼のメールを頂いたんです。本当にびっくりした。嬉しくて、絨毯の上で2回転しましたよ(笑)。
僕は左官職人だから、自分のやりたいように、自分自身の作品を産み出すつもりはないんですよ。依頼してくれた人が満足するものを作りたいとしか考えてない。今回も、屋敷さんたちの『真田丸』への情熱が伝わってきたから、その想いにどう応えるかばかりを考えていましたね。
いちばん最初に屋敷さんにお見せした字は、今振り返ってみると、子どもみたいな字でした。僕は書の専門家ではないけど、”真田丸”って難しい字なんです。奇をてらったことをしてはいけない字。それもあって、悩んだし苦しんだね。基となる壁を作って、そこに字を書いて壊して、という作業を繰り返しても、何か違うなと感じた。それで、70回くらい書いてみたところで、普通のコテではだめだと気付いたんです。だから、題字専用のコテを自作しました。これで、大きく文字が進化したと思う。
本番は緑山スタジオに飛騨高山の赤土を運んで、その壁に字を書いたんだけど、実は、あまり記憶がないんだよね。最初に赤土にコテを付けたときと、最後”丸”を書き終わったときのことくらいしか覚えてない。神様が書かせてくれてたんじゃないかな。
僕がいいなと感じるのは”命がある”作品。どんなに整っていても”死んでる”のはだめなんです。”真田丸”の字は、命びんびんにしてやろう、キレキレな線を書こう、その一心だったから、迷いのない命を持った字になったのです。終わったあとの僕は、真っ白な抜け殻みたいになっていましたよ。
それにしても、今回僕らは”泥書”っていう新しいジャンルを作ったかもしれないよね。それを依頼した側が計算してたのかは分からないけど(笑)、想像できないところからおもしろいものが生まれ、僕自身にとっても、一生忘れない事柄になりましたね。
本番を一発で決めた一部始終
挟土さんが、題字を書いた当日の様子をブログに綴っています。
「 挾土さん、僕らは、もう一度書かれても同じことをやりたいと思っていますが
でも、これ、ここで、この一発で決めたって事に
文字の質より、価値があることだと思うんですよね~・・・」そんな言葉に
確かに、この一発の今の新鮮さと、ドキドキ感を優先するべきかもしれない。そう思い直して「はい」と答え
真田丸の文字は一発で終わった。
あの勢いと力強さを持った題字は、まさかの一発OKだったんですね。
職人の鼓動と制作スタッフの熱気が伝わってくる素晴らしいエントリです。
真田丸 題字 | 左官-挾土秀平のブログ
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